日本大百科全書(ニッポニカ) 「シトロン」の意味・わかりやすい解説
シトロン
しとろん
citron
[学] Citrus medica L.
ミカン科(APG分類:ミカン科)の常緑小木ないし中高木。マルブシュカンともいう。葉は長楕円(ちょうだえん)形、花は頂生または腋生(えきせい)で、数個が総状花序につく。花弁は4~5枚で、内部は白色、外側は淡紫色、雌しべは1本、雄しべは多数。亜熱帯や熱帯では周年開花結実する。果実は紡錘形で150~200グラム。果頂部に約1.5センチメートルの乳頭がある。瓤嚢(じょうのう)(袋)は分離しにくい。果肉は淡黄色で酸味が強い。約10粒の単胚(はい)性種子がある。果実は砂糖煮に、果汁は飲料とし、クエン酸の原料ともする。果皮や葉から香油をとるほか、乾燥して薬用とする。繁殖は挿木による。原産地はガンジス川上流の高地といわれ、紀元前3~前2世紀にはペルシアからイタリアに伝わった。中国でも前300年前後に記載がある。日本では『本草図譜』(1828)に記載されている。ブッシュカン(仏手柑)はシトロンの1変種で、柱頭と心皮が多数に分かれ、発育果の先端は分岐し掌状となる。果実は約400グラムで、果肉の発育はよくないが、よく盆栽にする。
[飯塚宗夫 2020年10月16日]