シトロン(その他表記)citron
Citrus medica L.

デジタル大辞泉 「シトロン」の意味・読み・例文・類語

シトロン(citron)

ミカン科の常緑小高木。花は淡紫色。実は長卵形でひだがあり、果肉淡黄色酸味が強い。果実は砂糖煮、果汁飲料果皮や葉は香料にする。インド原産で、暖地に栽培される。丸仏手柑まるぶしゅかん
炭酸水レモン汁を加えて作った清涼飲料水 夏》

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精選版 日本国語大辞典 「シトロン」の意味・読み・例文・類語

シトロン

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語・フランス語] citron )
  2. ミカン科の常緑低木。インド東部原産で、古くから西アジア、ヨーロッパに伝わり地中海沿岸で広く栽培される。幹は高さ三メートルぐらい、葉は互生し長さ約一三センチメートルの長楕円形で縁に鋸歯(きょし)がある。花は径三・五センチメートルぐらいの四弁花または五弁花で外面はうす紫色。果実は長円形、または卵形で先がとがり、表面にはみぞがあり果皮は厚く黄色。果肉は白く酸味と苦味があり香気が高い。果皮から精油をとるほか砂糖づけなど食用にされる。まるぶしゅうかん。かぶち。
    1. [初出の実例]「小笠原島に産するシトロンといへる菓物はレモンの種類にて」(出典:東京日日新聞‐明治二〇年(1887)六月一六日)
  3. 精製飲料水にレモン汁、シロップ、香料などを加えた清涼飲料水。《 季語・夏 》
    1. [初出の実例]「サイダーに似たる果酒にシトロンなるものあり」(出典:舶来語便覧(1912)〈棚橋一郎・<著者>鈴木誠一〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「シトロン」の意味・わかりやすい解説

シトロン
citron
Citrus medica L.

ミカン科の常緑小木。大果で香りのよいかんきつ類でレモンと類縁関係がある。インド原産。中近東を経て前300年ころにはローマに伝来した。中国にも紀元前に伝播(でんぱ)した。アメリカ大陸には他のかんきつ類と同様,コロンブスの発見以降に導入され,西インド諸島から各地へ伝播した。日本には,《日葡辞書》(1603)にその名があることから,江戸時代前の伝来と思われる。量的には少ないが,イタリア南部,コルシカ島,ギリシアで糖果用に経済栽培されている。イタリアの主要品種はディアマンテ。枝にはとげがある。葉は淡黄緑色で鋸歯がレモンより明りょう。葉柄は短く翼葉がない。新芽,花が淡紫色をおびる品種が多い。花弁はレモンに似て細長い。花は総状花序につき四季咲性の傾向がある。果形は一般に楕円形だが変異があり,果頂部に乳頭が発達する。果面は黄色で滑らかだが,粗いものもあり,果皮は厚い。果肉部は少なく果汁も少ないが,酸味の強い品種と弱いものがある。種子は多く単胚性。繁殖は挿木による。レモンより寒さに弱い。古く,エトログシトロンはユダヤ教の祭事に使われた。また,ローマでは部屋・衣服用の香料や虫よけに利用した。砂糖が十分入手できるようになってから,半切りにして果肉をとり除き,ザボン漬のようにして糖果にされた。エトログはウイルスの検定植物になる。観賞用にもされ,有名なブシュカン(仏手柑)はシトロンの一変種である。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「シトロン」の意味・わかりやすい解説

シトロン
しとろん
citron
[学] Citrus medica L.

ミカン科(APG分類:ミカン科)の常緑小木ないし中高木。マルブシュカンともいう。葉は長楕円(ちょうだえん)形、花は頂生または腋生(えきせい)で、数個が総状花序につく。花弁は4~5枚で、内部は白色、外側は淡紫色、雌しべは1本、雄しべは多数。亜熱帯や熱帯では周年開花結実する。果実は紡錘形で150~200グラム。果頂部に約1.5センチメートルの乳頭がある。瓤嚢(じょうのう)(袋)は分離しにくい。果肉は淡黄色で酸味が強い。約10粒の単胚(はい)性種子がある。果実は砂糖煮に、果汁は飲料とし、クエン酸の原料ともする。果皮や葉から香油をとるほか、乾燥して薬用とする。繁殖は挿木による。原産地はガンジス川上流の高地といわれ、紀元前3~前2世紀にはペルシアからイタリアに伝わった。中国でも前300年前後に記載がある。日本では『本草図譜』(1828)に記載されている。ブッシュカン(仏手柑)はシトロンの1変種で、柱頭と心皮が多数に分かれ、発育果の先端は分岐し掌状となる。果実は約400グラムで、果肉の発育はよくないが、よく盆栽にする。

[飯塚宗夫 2020年10月16日]


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百科事典マイペディア 「シトロン」の意味・わかりやすい解説

シトロン

インド東部原産の柑橘(かんきつ)。ミカン科の低木で,寒さに弱く,日本では暖地でも冬季防寒を必要とする。花は花弁の外側が淡紫色。果実は紡錘形で頂部が乳頭状を呈し,果皮は成熟すると黄色となる。酸味が強く生食できない。砂糖煮や飲料とし,またクエン酸をとる。
→関連項目ブッシュカン(仏手柑)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「シトロン」の意味・わかりやすい解説

シトロン
Citrus medica; citron

ミカン科の常緑低木。マルブシュカンともいう。インド原産のミカンの1種でアジアで古くから栽培され,今日ではコルシカ島をはじめ地中海地方で主産する。レモンに似ているが葉や果実がより大きく,香りもより強い。果皮を砂糖漬にする。熱帯産の植物であるため寒さに弱く,日本では露地栽培はむずかしい。観賞用に盆栽として栽培される。

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栄養・生化学辞典 「シトロン」の解説

シトロン

 (1) 柑橘類の一種.(2) 清涼飲料の一つ.

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世界大百科事典(旧版)内のシトロンの言及

【かんきつ類(柑橘類)】より

…また,インド大陸にはパペダ類のようなかんきつ類の原始型が分布しているが,オーストラリアにはミカン属,キンカン属,カラタチ属は原生せず,近縁のミクロシトラス属Microcitrus,エレモシトラス属Eremocitrusが分布している。現在の主要かんきつ類であるライム,ブンタン,レモン,シトロン,スイートオレンジ(以下オレンジ),ダイダイ(サワーオレンジ),ポンカンなどはインド北東部のアッサムを中心とする地域からブラフマプトラ川流域で,またカラタチやユズは長江(揚子江)上流地域で,キンカンは東南アジアから中国南部で生じたと考えられている。これらのかんきつ類から,自然交雑や突然変異で多くの品種が起源・育成されてきたと考えられる。…

※「シトロン」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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