日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブランナー」の意味・わかりやすい解説
ブランナー
ぶらんなー
Hans Christian Branner
(1903―1966)
デンマークの小説家。現代北欧のもっとも繊細にして孤独と不安の精神を代表する作家で、代表作の長編『騎手』(1949)で世界に知られる。ある三十女の一昼夜の心理を精神分析的に追求したもので、よくカミュの『ペスト』に比較される。デビュー作は小玩具(がんぐ)工場の生活を描く『玩具』(1936)。その後『浜辺で遊ぶ子供』『女についての夢』などを経て、短編集『もう少しで我らはいなくなるのだ』(1939)、『2分間の沈黙』(1944)で名声を確立。短編の名手で、ことに好んで子供の恐怖心理を描く。ナチス占領下の『誰も夜を知らない』(1956)は抵抗文学として知られる。ほかに『騎手』の戯曲化をはじめ、かなりの劇作も手がけている。
[山室 静]