改訂新版 世界大百科事典 「ブントシュー」の意味・わかりやすい解説
ブントシュー
Bundschuh
中世末期ライン川上流地域におこった一連の農民一揆の企て。ドイツ農民戦争の先駆をなす。ブントシューとは,長い革紐のついた農民靴のことで,転じて一揆の旗印となった。この旗印の最初は,1439,44年フランスのアルマニャック党の軍隊がエルザス(アルザス)地方に侵入したとき,在地農民が郷土防衛の象徴として掲げたのに始まる。
これが反封建闘争の旗印となるのは,93年3月エルザスのシュレットシュタット一揆のときである。この一揆は,シュレットシュタットの前市長ウルマンや近隣農村の有力者を指導者として,シュトラスブルクの教会裁判の廃止など3ヵ条の綱領を掲げたが,事前に発覚した。次いで1502年4月,シュパイヤー司教管区ウンターグロームバハ村の農奴フリッツJoss Fritz(生没年不詳)が一揆を企てた。ここでは,皇帝を除くすべての支配権力の除去,教会・修道院財産の没収,あらゆる貢租・地代の廃止,共有地の解放がうたわれた。多数の同志が獲得されたが,ブントシューの旗の作製が遅れ,この間密告にあって陰謀は挫折し,10人が処刑された。フリッツはフライブルク市近郊レーエンに逃れ,そこで牧夫としてひそんでいたが,1513年春再び一揆の組織に着手し,10ヵ条の急進的綱領をうち出し,確信的同志は200人余に達した。しかし,密告により今回も挫折した。フリッツは巧みに逃れ,17年春3度目の陰謀を企て,その組織範囲はライン川上流各地に及んだ。しかし,発覚し,フリッツは身を隠し,二度と現れなかった。
執筆者:瀬原 義生
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報