広義には、近代地代以外のいっさいの定率および高率の地代をさし、狭義には、農奴制のもとで領主が権力(経済外的強制)をもって農民から徴収した過重な地代をさす。前者の定義は、アンダーソンJames Anderson『地代と十分の一税との効果』Effects of Rent and of Tythe(Recreations, vol. V,1801)およびそれを継承したマルクス『資本論』第3巻第37章以下にみえる。それによれば近代地代とは、大借地農たる農業資本家が平均利潤を超える利潤を得た場合だけ、超過分を地主に支払うことを原則とする。したがって超過利潤の有無に関係なく徴収される十分の一税などの定率地代や、利潤そのものを奪い取る高率地代は、封建地代とみなされる。
狭義のほうは、マルクスの地代論に由来するとされ、ほぼ通説となっている。それによれば、フランスの地代荘園(しょうえん)で生産物に対する地代の比率が30%以上に達し、日本の江戸時代の地代率が四公六民すなわち40%を原則としたのは、ともに封建地代の典型とみなされる。なお明治期から昭和初期にかけて寄生地主制のもとに形成された高率地代を、封建地代とみるか否かの論争が、昭和初期に行われたが、現在では封建地代説が優勢である。フランスの封建地代はフランス革命で原理的に否定され、日本の寄生地主制下の高率地代は農地解放で廃棄された。
西洋の古典荘園に顕著な賦役も、普通、封建地代の典型とされるが、実はおもに富農が自家の奴隷労働力の一部を領主に提供したものにすぎない。すなわちそれは、賦役提供責任者たる富農が、領主と同じく支配階級の成員であった点で、農業資本家が同じ資本主義社会の支配階級上層たる地主に支払う近代地代に似ている。ただしイギリスで13世紀ごろ広まった賦役は、領主が農奴に強制した労働地代で、封建地代の一種であった。
[橡川一朗]
封建社会においては,封建的生産関係が支配的であり,そのもとにおいて,土地の支配者である領主(封建的土地所有者)は,その土地に居住している農民(および手工業者など)から,賦役(ふえき)や年貢(ねんぐ)などさまざまな貢租を徴収する。その賦役や貢租を総称して封建地代という。封建社会では,個々の領主の支配する所領(荘園)が生産関係の基本単位をなしており,そこでは,直接生産者たる農民および手工業者などはそれぞれ生産手段(土地および用具など)と結合しており,領主は,その所領全体の封建的土地所有者として,それら直接生産者を支配している。そして,直接生産者の剰余労働ないし剰余生産物(自分と家族の維持に必要な部分を除いた剰余部分)は,経済外的強制(領主の行使する武力や裁判権や慣習など)によって,領主の手中に徴収されるのであり,こうして徴収された剰余労働ないし剰余生産物の総体が封建地代なのである。封建地代の形態としては,労働地代(賦役労働),生産物地代,貨幣地代の3者があり,歴史的にはこの順序で推移するが,二つまたは三つの形態が複合している場合もある。封建地代は,直接生産者の剰余労働または剰余生産物(貨幣地代ならその代価)のすべてを徴収するのが原則であるが,時代が下るにつれて,生産諸力の発展により,封建地代として徴収され尽くさない剰余部分が直接生産者の手もとに残るようになり,そうなると封建的生産関係はしだいに解体するようになる。
→領主制
執筆者:遅塚 忠躬
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封建領主が生産諸条件を保有する農民から強制的にとりたてる余剰労働ないし余剰生産物。(1)労働地代。農民が領主直営地においてみずからの労働用具を用いて行う無償の賦役労働。(2)生産物地代。農民が生産した現物の一部を領主に支払う。(3)貨幣地代。農民が生産物の一部を販売して得た貨幣を領主に支払う。(1)~(3)の移行の前提には農民の自立性の強まりがあり,また移行にともなって,農民の手元に余剰の一部が蓄積される傾向が強まる。その意味で貨幣地代の一般的成立は,独立自営農民層の成立と資本制地代の発生を可能にする。
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地代とは本来,土地の利用者(農民)が所有者に支払う土地の用益の対価である。中世ヨーロッパ社会では土地所有が領主権力の保持とかかわっており,地代は土地の利用者から経済外強制により課された。近代社会とは異なるこうした地代徴収の形態を封建地代と呼ぶ。それは,賦役による労働地代,生産物(現物)による地代,貨幣地代に区別され,おおむねこの順に変化することで,領主と農民の関係も人身支配から契約関係へと移行した。
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… 資本制地代は,(1)差額地代differential rent,(2)絶対地代absolute ground‐rent,(3)独占地代monopolistic rent,(4)代替費用地代(=機会費用地代),に大別される。 さらに地代を歴史的にみると,先資本制地代と資本制地代に分けられ,先資本制地代はさらに,封建地代と過渡的地代形態に区別される。そして,封建地代は歴史的発展の順序に従って,(1)労働地代,(2)生産物地代,(3)貨幣地代,に区別される。…
※「封建地代」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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