改訂新版 世界大百科事典 「ヘクラ山」の意味・わかりやすい解説
ヘクラ[山]
Hekla
アイスランド南部にあり,この国で最も活動的な複成火山。標高1491m,比高1000mのアルカリ安山岩質溶岩の流出を主とする成層火山。名前はアイスランド語で〈頭巾〉の意。山体は山頂を通る割れ目の方向(東北東~西南西)方向に延びている。ヘクラの活動は少なくとも数千年前から続いており,900年以降の歴史時代に,1980-81年の噴火まで16回の噴火が知られている。16回の噴火による噴出物量は,火山灰などのテフラ1km3強(降下堆積時にはこの5倍),溶岩流8km3。噴火様式には次の二つが認められる。(1)初期の数時間~数日間プリニー式噴火による石英安山岩質~流紋岩質テフラを噴出し,続いて長く溶岩を流出するもの,(2)流紋岩質のプリニー式噴火のみのもの。爆発的噴火はおもに山頂火口より生じ,溶岩の流出は山頂から東北東~西南西方向に広がる山腹割れ目噴火帯より起こる。初期の噴出物のSiO2重量%は先立った休止期が長いほど大きい性質がある。最大の噴火は1766-68年噴火で,1.3km3の溶岩を流出した。1947-48年噴火では初期のプリニー式噴火の噴煙柱は27kmに達した。
執筆者:浅井 辰郎+中村 一明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報