日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
ヘリコバクター・ピロリ検査
へりこばくたーぴろりけんさ
ヘリコバクター・ピロリHelicobacter pylori(ピロリ菌)に感染しているかどうかを調べる検査。
ヘリコバクター・ピロリはヒトの胃粘膜に生息するグラム陰性桿菌(かんきん)であり、胃粘膜への感染と、慢性胃炎、胃潰瘍(かいよう)や十二指腸潰瘍、胃がんなどの発生には因果関係がある。感染者に対する除菌治療には、健康保険が適用される。
ヘリコバクター・ピロリ感染の有無を診断するための検査方法はさまざまある。内視鏡による胃生検組織を用いた病理組織診断・培養法や迅速ウレアーゼ試験のように侵襲的(苦痛を伴う)検査のほか、尿素呼気試験や血清・尿中IgG抗体検査、便中抗原検査のように非侵襲的な検査もある。
IgG抗体検査は、ヘリコバクター・ピロリの感染により胃粘膜局所に免疫反応が惹起(じゃっき)されることで産生された抗体を測定し、感染の有無を診断する。検体には血清や尿が用いられる。抗体価はプロトンポンプ阻害薬などの消化性潰瘍治療薬の影響を受けないため、休薬を必要としない利点がある。一方、除菌などによってヘリコバクター・ピロリが消失して以降も抗体価が低下しない場合には偽陽性となるため留意する必要がある。検査の特性と目的(感染の有無の診断、除菌治療の効果判定、除菌治療の感受性試験など)に応じた検査方法が選択される。
人間ドックなどの任意型検診では、ヘリコバクター・ピロリのIgG抗体検査が行われることもある。ただし、これは胃がんや胃潰瘍・十二指腸潰瘍の危険因子を評価する検査であり、対策型の胃がん検診にかわるものではない。
[渡邊清高 2019年5月21日]