日本大百科全書(ニッポニカ) 「ペラミビル」の意味・わかりやすい解説
ペラミビル
ぺらみびる
Peramivir
A型およびB型インフルエンザ感染症に対する治療薬。製品名「ラピアクタ」。作用機序は、オセルタミビル(「タミフル」)やザナミビル(「リレンザ」)と同様、宿主細胞からウイルスが出芽する時に重要なノイラミニダーゼを阻害することにより、効果を発揮する。季節性インフルエンザのみならず、ブタ由来新型インフルエンザ、高病原性新型鳥インフルエンザにも高い感受性(有効性)が認められる。ノイラミニダーゼ活性阻害作用はタミフルやリレンザに比べて強力かつ長時間作用し、上気道分泌液中への移行(移動)も良好で、体内で代謝をうける(分解する)ことなく尿中に排泄(はいせつ)される。副作用が少なく、薬物相互作用も起こりにくい。世界に先がけて2010年(平成22)1月、日本で製造承認を得て発売された。
タミフルはカプセル剤で経口投与、リレンザは吸入剤として使用されるのに対し、本剤は注射剤で、点滴静注で投与される。市販製剤はラピアクタ点滴用バッグ300ミリグラム(50ミリリットル)、ラピアクタ点滴用バイアル150ミリグラム(15ミリリットル)の2種で、整理食塩液に溶解したものである。成人には300ミリグラムを15分かけて単回点滴静注する。重症化の恐れのある場合には1日1回600ミリグラム単回投与する。小児には体重1キログラムあたり10ミリグラムを投与する。
発症後すみやかに(48時間以内)投与を開始する。副作用は下痢(げり)、好中球減少、腎(じん)機能障害のある患者では投与量を減らすこと。患者の状態を十分観察した上で、本剤の投与の必要性を慎重に検討する。タミフルの投与が制限される10歳以上の未成年患者にも使用できる。
[幸保文治]