改訂新版 世界大百科事典 「ホイットルセー」の意味・わかりやすい解説
ホイットルセー
Derwent Stainthorpe Whittlesey
生没年:1890-1956
アメリカの地理学者。イリノイ州に生まれ,ベロイト大学(ウィスコンシン州)とシカゴ大学に学んだ。初め歴史学の修士号を得たが,しだいに地理学に関心が移り,20年にシカゴ大学で博士号を得た。20年からシカゴ大学の講師,助教授,28年人文地理学の新設講座教授としてハーバード大学へ移った。30-42年,《アメリカ地理学会年報(A.A.A.G.)》の編集を務め,44年には同学会会長となった。彼の業績のうち,不朽のものとされるのは,《A.A.A.G.》(1936)に発表された《世界の農業地域区分Major Agricultural Region of the World》である。今日でも,多少の修正を受けながらも,彼の考えに基づく区分法が世界中の教科書に掲載されている。次に地理学上意義があるのは,彼の示したコンパージュcompageという地域概念である。これは地域複合体ともいえるもので,自然環境,社会環境,生物界などが結合された一定の領域を指している。第3に,ジョーンズWellington Jonesと共著の経済地理学教科書《An Introduction to Economic Geography》(1922)があり,広く読まれた。第2次大戦直前から政治地理学に関心を移し,《The Earth and State》(1939),《German Strategy of World Conquest》(1942)を出版した。彼自身,中西部育ちで思想的には保守的で,ナチス・ドイツの地政学(ゲオポリティーク)に関心をもっていた。
執筆者:坂本 英夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報