日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボイジャー計画」の意味・わかりやすい解説
ボイジャー計画
ぼいじゃーけいかく
当初、木星、土星およびその衛星の観測を行うことを目的としたアメリカの惑星探査計画。ボイジャーVoyager探査機1号および2号から構成される。2機の探査機は1977年8月と9月に打ち上げられた。当初の計画通り木星と土星に接近した後、天王星と海王星への接近に成功し、それら惑星の重力を利用して加速された結果、太陽系の外へ飛び出して現在も遠ざかり続けている。二つのボイジャー探査機は、木星表面の大赤斑(だいせきはん)や、大気の擾乱(じょうらん)、それに伴う渦の動きおよび木星の四つの衛星、ガニメデ、カリスト、ユーロパおよびイオについても詳細な写真撮影に成功した。その後、当初は木星と土星だけだった探査対象を、天王星と海王星にまで拡大し、それら四つの惑星の合計48個の衛星を対象として鮮明な画像と観測データを取得した。また木星、天王星および海王星にも土星にあるものと同様なリングの構造があることを実写画像によって解明した。さらにボイジャー1号は、土星の最大の衛星タイタンから4030キロメートルのところを通過し、その濃密な大気が窒素からなることを明らかにした。その後、ボイジャー2号は、土星から10万1000キロメートルのところを通過し、写真撮影ほか各種のデータを取得し、さらに、天王星から7万1000キロメートルを通過した後、海王星から5000キロメートルのところまで接近し、観測に成功した。ボイジャー1号および2号は、そのまま、太陽系から離れていったが、1号は1990年2月14日、地球から59億キロメートルの彼方より、太陽系全体の写真を撮影し、地球へ送ってきた。1号、2号とも放射性同位体電池を搭載しているため、太陽から遠く離れていくにもかかわらず、2020年くらいまで通信可能と予想される。人類の製作物としてもっとも遠い宇宙へ旅立ったボイジャー1号と2号は、地球で録音、撮影したさまざまの音と画像を記録した金メッキのレコード盤を搭載しており、宇宙の彼方の知的生命体に向けて流したメッセージボトルとなっている。
[輿石 肇・岩田 勉]