日本大百科全書(ニッポニカ) 「ぼくの伯父さん」の意味・わかりやすい解説
ぼくの伯父さん
ぼくのおじさん
Mon Oncle
フランス・イタリア合作映画。1958年作品。監督・脚本・主演ジャック・タチ。前作『ぼくの伯父さんの休暇』(1952)で初めて出現して大人気となった、タチ自身が演じる謎の紳士ユロ氏が周囲に引き起こすささやかな混乱を描く。つつましやかなユーモアをもって即物的な不条理を描き出す独特のスタイルと、ユロ氏の奇妙な存在感で喜劇の新しい領域を開拓し、カンヌ国際映画祭審査員特別賞、アカデミー最優秀外国語映画賞ほか、多くの映画賞を受賞した。ユロ氏の住む古いアパルトマンとユロ氏の兄が住む極端にモダンな住宅のセットの、視覚的・造形的なおかしさを増幅させるユニークなデザイン、鮮やかなカラー撮影、日常的な音が醸し出す聴覚的ギャグなど、タチ映画独特の魅力にあふれた作品である。
[伊津野知多]