日本大百科全書(ニッポニカ) 「ボワギルベール」の意味・わかりやすい解説
ボワギルベール
ぼわぎるべーる
Pierre Le Pesant de Boisguilbert
(1646―1714)
フランスの経済学者。ルーアンに生まれる。法学を修めてルーアン地区の司法・行政の職につく。1695年匿名で『フランス詳論』Le détail de la Franceを発表して、コルベール主義のもとで荒廃し続けるフランスの経済的現実を告発し、恣意(しい)的税制を比例制・申告制・直接納税制による合理的税体系に転換することを提案し、農業の再生産を妨げる穀物取引の規制や低穀価政策を批判した。また、誤った富の観念による貨幣偏重の愚を指摘し、諸階級の利害の連帯を尊重し、法則としての経済秩序の発見に努めて、自由放任の政策によって人民大衆の一般的富裕=国富を回復すべきことを訴えた。引き続き1707年『フランス弁論』Factum de la Franceを他の重要な経済学諸論文とともに発表した。自然秩序の尊重や自由放任政策の主張などで重農主義の先駆をなし、マルクスによってフランス古典経済学の創始者とされた。なお、著作集『ピエール・ド・ボワギルベール――経済学の誕生』Pierre de Boisguilbert, ou la naissance de l'économie politique全2巻(1966)が刊行されている。
[津田内匠]