ポプラ社小説大賞(読み)ぽぷらしゃしょうせつたいしょう

知恵蔵 「ポプラ社小説大賞」の解説

ポプラ社小説大賞

児童書出版を主とするポプラ社が、2006年から10年まで、全5回実施した新人作家発掘のための文学賞。創設時には、大賞2000万円という破格の賞金と、社内編集部員(十数名)による選考という独自の制度が話題になった。高額賞金は、同社によると「新しい才能への投資」ということだが、同社の大人向け文芸書への本格展開を広くアピールするのも大きな目的。未発表のエンターテインメント小説であれば、ジャンルは問わないため、第1回は2746作品の応募があった。ただし、その第1回こそ、大賞に『3分26秒の削除ボーイズ―ぼくと春とコウモリと―』(方波見大志)が選ばれたが、第2・3回は大賞の該当作品がなく、第4回にいたっては、優秀賞(大賞に次ぐ賞)も選ばれなかった。
本賞が話題になったのは、10年10月31日に発表された第5回の大賞作品『KAGEROU』である。1285の応募作の中から選ばれた本作の作者齋藤智裕が、人気俳優の水嶋ヒロであることが分かり、また受賞前に所属事務所を電撃退社していたこともあって、マスコミの大きな注目を集めた。さらに2000万円の賞金を辞退したことや、ネットや週刊誌で「出来レース」などというバッシングが起こったことから、話題が沸騰。12月15日の発売を前に、40万冊を超える予約注文が殺到した。発売後は、その独特の文体表現にも話題が集まり、評論家の評価は分かれたものの、通販サイトAmazonでは、星1つの酷評レビューが殺到する「炎上」状態になった。しかし、発売からわずか2週間で、発行部数100万部超。新人の小説としては異例のベストセラーになった。日販マーケティング本部によると、ベストセラーを追う読者が主な購買者で、年代性別では40代女性が最多だったとのこと。なお同社によると、同文学賞は所期の目的が果たされたとして、11年度から「ポプラ社小説新人賞」(大賞の賞金は200万円)に継承される。

(大迫秀樹  フリー編集者 / 2011年)

出典 (株)朝日新聞出版発行「知恵蔵」知恵蔵について 情報

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