日本大百科全書(ニッポニカ) 「マイクロ波療法」の意味・わかりやすい解説
マイクロ波療法
まいくろはりょうほう
高周波療法の一つ。マイクロ波に属する周波数(波長)をもった治療器を利用して行う、一種の温熱療法である。医用に割り当てられている波長は、2450MHz±50MHz,5.8GHz±75MHz,22.125GHz±125MHzの三つがあるが、一般には2450MHz(12.5cm)のものが用いられる(MHz=メガヘルツ,GHz=ギガヘルツ)。これは汎用(はんよう)周波数である。電磁波であるため、電球で照射するようにアンテナを照射体として患部に向けるだけでよい。また、対応する極がないので、取扱いは簡単であり、電気回路内に人体が入らないので安全でもある。しかし、反面、照射部位のエネルギーは照射体と被照射部との距離の2乗に反比例するという法則があるため、距離を置くと照射範囲は広がるが、温熱効果が減少するという欠点がある。これを出力でカバーしようとしても、それにはおのずと限界がある。もう一つの欠点はエネルギーの到達が表面から数センチメートルにすぎないことである。なぜなら、この波長帯のエネルギーはよく水に吸収されるからである。このため、筋肉などのように血管の多い部位は温かくなり、治療目的に適するが、さらに深部を温める際には不適となる。したがって、関節などの照射の際には便利といえる。最近はハイパーサーミヤ(高体温処理)の加熱部分として利用されているが、前述のような理由から、表在性の悪性腫瘍(しゅよう)がその対象となる。
[玉川鐵雄]