改訂新版 世界大百科事典 「マクス」の意味・わかりやすい解説
マクス
maks
コーランやスンナに根拠がなく,したがってイスラム法では租税と認められない各種の雑税。タバリーの年代記その他の史書によれば,春分・秋分の贈物,帳簿手数料,両替手数料,送達吏報酬,貨幣鋳造者報酬,水車使用料,婚姻税など各種の雑税があり,ウマイヤ朝カリフ,ウマル2世やアイユーブ朝の君主,サラーフ・アッディーンは,これらの雑税を非合法として廃止したという。法学者がとくに問題としたのは,地方政権の君主や総督が街道上や城門外に税関を設け,入城または入市するムスリム商人からウシュール(ウシュルの複数形)の名で,商品価格の10%を徴収することであった。イスラム法のウシュルの規定では,ハルビー(敵国人)の商人に10%の関税を課すことは合法であるが,ムスリムとジンミーの商人には関税は課せられず,それぞれ年収の2.5%と5%の商業税を課せられるだけであった。そのため法学者はこれをマクスとして厳しく非難した。
執筆者:嶋田 襄平
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報