マクス(英語表記)maks

改訂新版 世界大百科事典 「マクス」の意味・わかりやすい解説

マクス
maks

コーランスンナに根拠がなく,したがってイスラム法では租税と認められない各種の雑税。タバリーの年代記その他の史書によれば,春分秋分の贈物,帳簿手数料,両替手数料,送達吏報酬,貨幣鋳造者報酬,水車使用料,婚姻税など各種の雑税があり,ウマイヤ朝カリフ,ウマル2世やアイユーブ朝君主サラーフ・アッディーンは,これらの雑税を非合法として廃止したという。法学者がとくに問題としたのは,地方政権の君主や総督が街道上や城門外に税関を設け,入城または入市するムスリム商人からウシュールウシュルの複数形)の名で,商品価格の10%を徴収することであった。イスラム法のウシュルの規定では,ハルビー(敵国人)の商人に10%の関税を課すことは合法であるが,ムスリムジンミーの商人には関税は課せられず,それぞれ年収の2.5%と5%の商業税を課せられるだけであった。そのため法学者はこれをマクスとして厳しく非難した。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のマクスの言及

【カイロ】より

…十字軍との戦いで有名な彼は,カイロ南方の丘の上に巨大な城砦(カルアQal‘a)を築いて政治と軍事の中心をここに移し,庶民のカイロ移住を自由にしたので,フスタートその他から流入する商工業者が多く,カイロは広々とした街路の都城から,狭い通りや袋小路に人家の密集するにぎやかな商工業者の町に変貌していった。サラーフ・アッディーンはまた,南はフスタートからカルア(城砦),カイロ(カーヒラ)を囲み,北はカイロの外港マクスにまで至る外周城壁を建設した。これは,この時代に中東の社会全体が軍事化し,貴族や官僚の支配から奴隷軍人(マムルーク)の支配へ変化していったことと対応している。…

※「マクス」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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