日本大百科全書(ニッポニカ) 「マッケリー」の意味・わかりやすい解説
マッケリー
まっけりー
Thomas Leo McCarey
(1898―1969)
アメリカの映画監督。カリフォルニア州ロサンゼルスに生まれる。ハル・ローチHal Roach(1892―1992)の下でギャグ作家としてローレル&ハーディ(スタン・ローレルStan Laurel(1890―1965)、オリバー・ハーディOliver Hardy(1892―1957))らの短編喜劇映画を多く手がけ、その後はエディ・カンターEddie Cantor(1892―1964)、ハロルド・ロイドといった喜劇俳優の主演作を監督する。とりわけマルクス兄弟主演の『我輩はカモである』(1933)は彼らの代表作として名高い。感情的な起伏をあえて抑制した作風で、老人問題を扱った『明日は来らず』(1937)のような社会派ドラマ、後に自ら『めぐり逢い』(1957)としてリメイクした『邂逅(めぐりあい)』(1939)のようなメロドラマでも才能を発揮した。スクリューボール・コメディの『新婚道中記』(1937)と、ビング・クロスビー主演のヒューマニズム溢れる『我が道を往(ゆ)く』(1944)でアカデミー最優秀監督賞を2度受け、後者ではプロデューサーかつ原作者としても受賞した。戦後は監督本数を大きく減らし、冷戦期には、赤狩りの標的とされたハリウッドにあって強硬な反共産主義の姿勢をとった。
[藤井仁子]
資料 監督作品一覧(日本公開作)
極楽島満員 Let's Go Native(1930)
ゴルフと女房 Part Time Wife(1930)
恋愛即興詩 Indiscreet(1931)
カンターの闘牛士 The Kid from Spain(1932)
我輩はカモである Duck Soup(1933)
ヒョットコ六人組 Six of a Kind(1934)
罪ぢゃないわよ Belle of the Nineties(1934)
人生は四十二から Ruggles of Red Gap(1935)
ロイドの牛乳屋 The Milky Way(1936)
新婚道中記 The Awful Truth(1937)
明日は来らず Make Way for Tomorrow(1937)
邂逅(めぐりあい) Love Affair(1939)
恋の情報網 Once upon a Honeymoon(1942)
我が道を往く Going My Way(1944)
聖(セント)メリーの鐘 The Bells of St. Mary's(1945)
善人サム Good Sam(1948)
めぐり逢い An Affair to Remember(1957)
誘惑の夜 Satan Never Sleeps(1962)
『Wes D. GehringLeo McCarey : From Marx to McCarthy,(2005, The Scarecrow Press, Lanham, Maryland)』▽『Ephraim KatzThe Film Encyclopedia, 5th edition(2005, Collins, New York)』