改訂新版 世界大百科事典 「マニリウス」の意味・わかりやすい解説
マニリウス
Marcus Manilius
1世紀ごろのローマの詩人。生没年不詳。《アストロノミカ(天文)》と題する叙事詩体の教訓詩5巻の作者。作品中に,9年のウァルスの軍団の敗北,アウグストゥス帝の在世,ティベリウス帝の治世への言及があることから,両皇帝の治世中にこの作品が書かれたと推定される。〈天文〉と題されているが,内容は占星術理論の説明であり,以下のような構成である。1巻は占星術の起源,天球・天体の説明,2巻は黄道十二宮,その特徴,人間の身体との関係など,3巻は十二宮の作用分野,ホロスコープの決定法など,4巻は十二宮の人間・民族への影響など,5巻は十二宮外に現れる〈しるし〉とその影響などの説明。この作品はたぶん未完である。思想はストア的傾向をもち,随所に道徳的教訓が述べられる。文体はルクレティウス,ウェルギリウス,オウィディウスを範とし,語法は正確,韻律(ヘクサメトロス)は流暢で,熟練を示す。
執筆者:高橋 通男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報