マンデリシュターム(読み)まんでりしゅたーむ(その他表記)Осип Эмильевич Мандельштам/Osip Emil'evich Mandel'shtam

日本大百科全書(ニッポニカ) 「マンデリシュターム」の意味・わかりやすい解説

マンデリシュターム
まんでりしゅたーむ
Осип Эмильевич Мандельштам/Osip Emil'evich Mandel'shtam
(1891―1938)

ロシアの詩人。ワルシャワでユダヤ系の商家に生まれる。ドイツのハイデルベルク大学ペテルブルグ大学でフランス中世文学を学ぶ。とりわけフランス、イタリアの詩編に通暁し、ロシア象徴主義の影響も受けて、詩人グミリョフ、アフマートワらとアクメイズムの詩誌『アポロン』によって活躍。1913年の処女詩集『石』(第三版1923)、詩集『トリスチア』(1922)、詩論集『ポエジーについて』(1928)・『ダンテについての会話』(1930年代初め)のほか、散文には『時のざわめき』(1925)、『エジプトのスタンプ』(1928)などがある。詩風は新古典派的で、ゴシック建築的イメージをもち、ロシア詩文学にヨーロッパの神話を加える。散文は幻想的、多響的で、世紀末のペテルブルグを舞台にユダヤ的色彩も濃密に描く。38年極端に非政治的であるとして逮捕され、ウラジオストク獄中で死亡、「雪どけ」後に名誉回復。70年アメリカでナジェージダ未亡人による『回想』が刊行された。

[工藤正広]

『峯俊夫訳『石』(1976・国文社)』『安井侑子訳『時のざわめき』(1976・中央公論社)』『ナジェージダ・マンデリシュターム著、木村浩・川崎隆司訳『流刑の詩人・マンデリシュターム』(1980・新潮社)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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