アクメイズム(読み)あくめいずむ(英語表記)Акмеизм/Akmeizm

日本大百科全書(ニッポニカ) 「アクメイズム」の意味・わかりやすい解説

アクメイズム
あくめいずむ
Акмеизм/Akmeizm

ロシア象徴派の運動が事実上解体してまもない1910年代初めに成立した文学流派。雑誌『アポロン』に拠(よ)って活動した。ロシア象徴派を「敬うべき父」とみなし、詩的技法の点でその遺産を数多く受け継いだが、神智(しんち)論、オカルティズムなどの神秘主義的な世界を否定して、古典的な明晰(めいせき)さ、現実の生命感の回復を志した。グミリョフ、ゴロデツキーを創始者として、クズミン、マンデリシュターム、アフマートワらがこれに加わった。

 ギリシア語の「頂点(アクメ)」に由来するその名が示すとおり、アクメイズム詩人たちは、自らの作品を芸術的真実の最高の表現と考え、また一方で、男性的かつ直截(ちょくせつ)な世界観を貫こうとする立場から、人類の祖アダムに由来するアダミズムをも名のった。彼らは概して、抽象的・観念的な語彙(ごい)を避け、硬質で明解な表現を好み、エキゾチックな自然、前史時代の生活、恋愛などをテーマに描いた。事物やことばそのものに対する考え方には、次代の未来派詩人たちと部分的に共通するものがある。革命後、運動としては消滅したが、その精神ツベターエワ、ホダセービチらの優れた詩人によって受け継がれた。

亀山郁夫

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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