改訂新版 世界大百科事典 「ムアーウィヤ1世」の意味・わかりやすい解説
ムアーウィヤ[1世]
Mu`āwiya Ⅰ
生没年:?-680
ウマイヤ朝の創建者でその初代カリフ。在位661-680年。父は預言者ムハンマドに敵対したメッカのクライシュ族ウマイヤ家の指導者アブー・スフヤーン。633年の秋,異母兄ヤジードの軍に従ってシリア征服に向かい,639年,ヤジードの死で,ウマル1世によりシリア総督(アミール)に任命された。ウスマーンのカリフ就任後は,地中海に進出するなどしてシリアでの支配を固めた。656年にウマイヤ家出身のカリフ,ウスマーンが殺されると,その血の復讐を叫んで4代カリフ,アリーと対決した。657年のシッフィーンSiffīnの戦を境としてしだいに勢力を拡大し,660年エルサレムでカリフを宣言,661年のアリーの暗殺でダマスクスにウマイヤ朝を開いた。ディーワーンの創設,ビザンティンへの定期的遠征を行うなど,内乱で混乱したイスラム国家を建て直した。反面,実子ヤジード1世を次期カリフに指名し,カリフ世襲化の道を開いた。
執筆者:花田 宇秋
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報