ムーネシュリー(英語表記)Mounet-Sully

改訂新版 世界大百科事典 「ムーネシュリー」の意味・わかりやすい解説

ムーネ・シュリー
Mounet-Sully
生没年:1841-1916

フランスの俳優本名はジャン・シュリー・ムーネJean Sully Mounet。〈聖なる怪物〉と呼ばれた名優の一人。1870年代から20世紀の初めにかけて,フランス古典の主な悲劇大役をすべて演じ,一世を風靡した。南西部ベルジュラックに生まれる。やや遅れてパリ国立演劇学校(コンセルバトアール)で学び,1872年,31歳でコメディ・フランセーズに入り,J.ラシーヌ《アンドロマック》のオレスト役でデビュー,狂気につかれるこの人物を真に迫って演じ驚嘆された。同年のP.コルネイユ《ル・シッド》のロドリーグでもかっさいされ,翌年V.ユゴー《マリオン・ド・ロルム》のディディエ役ではユゴー劇を再生させた。74年正式座員(ソシエテール)に昇格し,94年から死ぬまでは同座の首席俳優として君臨した。ユゴー《エルナニ》(1877),《リュイ・ブラス》(1879)では,サラ・ベルナールと共演して絶賛され,こうしてロマン派演劇の復興に貢献した。体格に恵まれ,激烈な表現を駆使した彼の持役うちで,なかでも傑出して有名なものは,前述のオレスト,シェークスピアのハムレット,そしてとりわけソフォクレス《オイディプス王》の主役(1881)であり,それらの名演は今日でも演劇史上の語りぐさとなっている。弟ポール・ムーネも俳優として知られている。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

今日のキーワード

プラチナキャリア

年齢を問わず、多様なキャリア形成で活躍する働き方。企業には専門人材の育成支援やリスキリング(学び直し)の機会提供、女性活躍推進や従業員と役員の接点拡大などが求められる。人材の確保につながり、従業員を...

プラチナキャリアの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android