メゾスコピック・エレクトロニクス(読み)めぞすこぴっくえれくとろにくす

日本大百科全書(ニッポニカ) の解説

メゾスコピック・エレクトロニクス
めぞすこぴっくえれくとろにくす

原子分子レベルの微視的(ミクロスコピック)な領域と、巨視的(マクロスコピック)な領域との中間的な(mesoscopic)領域での電子現象を利用するエレクトロニクス。微小金リングに磁束を通したアハラノフ‐ボーム効果の実証研究(1986)から、メゾスコピックという言葉が登場する。メゾスコピック領域では、量子サイズ効果が現れ、物質の性質が変わる。半導体では数十~数百ナノメートル(10-9メートル)の厚さでメゾスコピック領域(量子井戸)をつくり、レーザー発光域や効率を改善している。また、この領域では、電子は干渉性をもつ波の性質を示すことから、従来のエレクトロニクスではみられないふるまいをし、現在のトランジスタの1000倍という高速動作が得られる。これらの性質を用いて超伝導量子干渉素子SQUID)、超伝導トランジスタ、電子波デバイスが開発されている。メゾスコピック領域では、電子間のクーロン相互作用によってトンネル効果が抑制されるため、電子1個ずつトンネル接合を通過させることができるという、ブロッケイド現象が現れる。この現象は電磁標準や単電子記憶素子に利用されている。

[岩田倫典]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

メゾスコピックエレクトロニクス
meso scopic electronics

半導体の微細加工が進み,素子自体が極小化したときに現れる量子力学的電子波の干渉を利用するエレクトロニクスの総称。メゾスコピックはマクロとミクロの中間領域を意味する。半導体デバイスの大きさがサブミクロン (1万分の 1mm) 以下のサイズになると,素子を通る電子波の位相情報が保存されるコヒーレンス長を下回るため,干渉現象が素子内や端子で観測できる。こうした干渉現象を利用すれば,従来の電子数を制御する素子とは原理が異なる,電子波の位相制御に基づいた新しい素子ができる。量子細線での電子波干渉などがある。

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