メトヘモグロビン血症

内科学 第10版 「メトヘモグロビン血症」の解説

メトヘモグロビン血症(先天性溶血性貧血)

(4)メトヘモグロビン血症(methemoglobinemia)
概念
 メトHbとはヘム鉄が酸化され3価の状態になったもので,酸素を結合する能力はない.メトHbは速やかに還元され,正常では2%以下であるが,過剰産生ないしは還元機構の異常により増加する.
病態生理
 病因には遺伝性のものと後天性のものとがある.遺伝性のものにはHb M症やHb Freiburgなどの異常Hb症と,メトHb還元酵素(methemoglobin reductaseまたはNADH-diaphorase,NADH-cytochrome b5 reductase)の異常によるものがある.後天性(中毒性)のものは硝酸塩アセトアニリドフェナセチン,アセトアミノフェン,スルホンアミド類などの酸化的薬剤によるものが多い.
臨床症状
 血液中のメトHb濃度が1.5 g/dL以上になると明らかなチアノーゼをきたす.また,メトHbは酸素親和性が非常に高く,頭痛,めまい,知的障害などの低酸素症の症状を呈し,50%以上になると致死的である.
診断
 メトHb還元酵素異常症は血液が暗褐色調を呈し,酵素活性測定により診断できる.中毒性のものでは酵素活性は正常である.診断のポイントはチアノーゼを呈するにもかかわらず,動脈血酸素飽和度割合は正常である点である.
治療
 遺伝性の場合はアスコルビン酸300~600 mg/日ないしメチレンブルー180~240 mg/日の経口投与,中毒性の場合は直ちにメチレンブルーを1 mg/kg静注する.[藤井寿一]

出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報

栄養・生化学辞典 「メトヘモグロビン血症」の解説

メトヘモグロビン血症

 →メトヘモグロビン血

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内のメトヘモグロビン血症の言及

【チアノーゼ】より

ヘモグロビンの異常としては,2価の鉄のかわりに3価の鉄を含み酸素を運搬できないメトヘモグロビンの存在によって,著しいチアノーゼを呈する。このようなメトヘモグロビン血症は,先天性異常として生ずるほか,フェナセチン,アセトアニリド,クロロキンなどの中毒によっても生ずる。末梢性チアノーゼは,体動脈血の酸素飽和度は正常に保たれているが,粘膜や皮膚での血流が著しく減少するために,毛細血管血の組織に奪われる酸素量が増加するため,毛細血管血の酸素飽和度が低下してチアノーゼを示すものであり,中心部(口腔粘膜や結膜)では軽く,指先など末梢にいくにしたがって著しくなる。…

※「メトヘモグロビン血症」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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