内科学 第10版 「メトヘモグロビン血症」の解説
メトヘモグロビン血症(先天性溶血性貧血)
概念
メトHbとはヘム鉄が酸化され3価の状態になったもので,酸素を結合する能力はない.メトHbは速やかに還元され,正常では2%以下であるが,過剰産生ないしは還元機構の異常により増加する.
病態生理
病因には遺伝性のものと後天性のものとがある.遺伝性のものにはHb M症やHb Freiburgなどの異常Hb症と,メトHb還元酵素(methemoglobin reductaseまたはNADH-diaphorase,NADH-cytochrome b5 reductase)の異常によるものがある.後天性(中毒性)のものは硝酸塩,アセトアニリド,フェナセチン,アセトアミノフェン,スルホンアミド類などの酸化的薬剤によるものが多い.
臨床症状
血液中のメトHb濃度が1.5 g/dL以上になると明らかなチアノーゼをきたす.また,メトHbは酸素親和性が非常に高く,頭痛,めまい,知的障害などの低酸素症の症状を呈し,50%以上になると致死的である.
診断
メトHb還元酵素異常症は血液が暗褐色調を呈し,酵素活性測定により診断できる.中毒性のものでは酵素活性は正常である.診断のポイントはチアノーゼを呈するにもかかわらず,動脈血酸素飽和度の割合は正常である点である.
治療
遺伝性の場合はアスコルビン酸300~600 mg/日ないしメチレンブルー180~240 mg/日の経口投与,中毒性の場合は直ちにメチレンブルーを1 mg/kg静注する.[藤井寿一]
出典 内科学 第10版内科学 第10版について 情報