日本大百科全書(ニッポニカ) 「アセトアニリド」の意味・わかりやすい解説
アセトアニリド
あせとあにりど
acetanilide
酢酸とアニリンのアミド。アセチルアニリン、N-フェニルアセトアミドともいう。アニリンに無水酢酸あるいは塩化アセチルを反応させて得られる。無色の板状結晶。冷水に約0.5%、熱水には約5%溶ける。アルコール、クロロホルム、エーテルなどの有機溶媒にはかなり溶けるが、石油には溶けない。金属ナトリウムと反応してN-ナトリウム誘導体を生成し、強酸の作用により不安定な塩を生成する。染料など各種有機化合物の合成原料として重要である。また鎮痛、解熱作用があり、1886年にアンチフェブリンという商品名で解熱剤として初めて医薬に供されたが、劇薬であり強い副作用があるため現在では使用されていない。
[山本 学]