改訂新版 世界大百科事典 「メンギン」の意味・わかりやすい解説
メンギン
Oswald Menghin
生没年:1888-1973
オーストリア生れの先史考古学者。1922年ウィーン大学教授となり,38年からナチス政権の文部大臣を務めたが,第2次世界大戦後戦犯に問われ,47年まで服役した。出獄後アルゼンチンに移住し,南アメリカ考古学に専念する。W.シュミット主宰の文化史的民族学に影響を受けたウィーン学派の考古学者として知られ,岡正雄,石田英一郎がその指導を受けている。《石器時代の世界史Weltgeschichte der Steinzeit》(1931。前半のみ岡正雄が翻訳,1943出版)は,世界の石器時代文化を民族学的・文化史的手法で初めて総合的に比較検討した力作である。〈原石器時代〉に既知の〈刃器文化〉〈ハンド・アックス文化〉に加えて〈骨器文化〉を提唱,〈原新石器時代〉には〈養豚民文化〉(〈円筒斧文化〉〈蓆陶文化〉に細別。日本の縄文文化は後者に属する),〈有角獣飼養民文化〉〈騎獣飼育民文化〉を区分し,これらのアジア発生を説く。次いで〈混成期新石器時代〉には村落文化,都市文化,草原文化が成立して歴史時代の始まりとかかわることを説く。メンギンの気宇壮大な先史時代世界史を超えるものは,その後にも先にもみられない。
執筆者:佐原 眞
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報