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発掘調査 はっくつちょうさ

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防府市歴史用語集の解説

発掘調査

 地面を掘って、昔の人が生活をしていた場所や使っていた道具などを探すことを言います。

出典|ほうふWeb歴史館
Copyright 2002,Hofu Virtual Site Museum,Japan
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

発掘調査
はっくつちょうさ

過去の人間が生活した生活環境自然環境を、発掘することで確認し、理解するための作業。

考古学と発掘

考古学とは、浜田耕作が、イギリスのホガースの著書から「過去人類の物質的遺物(により人類の過去)を研究する学なり」と定義したように、物質的資料を研究の手段とする学問であるから、考古学にとって発掘は良質の資料を得るための不可欠の事業である。物質的資料とは、石器・土器・青銅器・鉄器・瓦(かわら)などの遺物、住居址(し)・墳墓・水田址・倉庫・寺院址・官衙(かんが)などの遺構、この両者を含む遺跡をさすが、かならずしも人類の意図的な痕跡(こんせき)とはいえない足跡・糞石(ふんせき)・轍(わだち)、貝塚中の貝・獣骨・魚骨なども資料に含まれる。発掘にとって重要なのは、これら資料の単なる収集ではなく、遺物と遺物、遺物と遺構、遺構と遺構の位置関係を明らかにすることで、これが発掘調査の目的といってもよい。原位置(出土地点・出土層位)が明らかでない遊離資料は、たとえ美的に優れた完形品といえども資料価値は低い。たとえば、ある土器(遺物)が住居址(遺構)から出土した場合、その土器は住居の床面のどういう位置に付着して出土したのか、あるいは後の埋没土から出土したのかを見極めるのが発掘調査である。このようにして正確な位置関係が付与された資料は、たとえ破片であっても考古学的な資料価値は高い。このことは、住居址や墳墓などの遺構・遺跡においても同様で、原位置にあるからこそ周辺立地との関係、造営者との関係などが初めて明らかになるのであり、これらがいかに精巧に復原移築されたとしても、標本を出るものではない。原位置で明らかにされて初めて生きた資料となる。
 発掘調査はいかに精度が高く挙行されたとしても、一度掘られたものはもとに復原することができない一種の破壊であるので、以上述べた目的を満足させるように、細心の注意をもって行われなければならない。[下條信行]

発掘と法律

発掘を行おうとする場合、わが国では文化財保護法の規制を受ける。同法では、発掘の対象となる文化財は地下(海底も含む)に埋蔵されているので埋蔵文化財とよんでいるが、埋蔵文化財の発掘を行う者は、学術調査のための発掘の場合は30日前、土木工事に伴う発掘の場合は60日前までに、都道府県教育委員会、場合によっては市町村教育委員会を経て文化庁長官に届け出なければならない。[下條信行]

事前調査

発掘調査は鍬(くわ)を入れることのみを意味するのではなく、事前調査→発掘=記録→整理研究→報告書の作成、の手順を踏んで完了する。事前調査は本発掘の前に、遺跡の時代的、位置的ポイントを押さえて本発掘を効果的に行い、また調査目的の設定、調査計画、作業計画の策定のために行う調査である。調査の目的、発掘範囲、土層の厚薄などは、遺跡によって個々に異なるので柔軟に対処すればよい。要は遺跡本体を毀損(きそん)することなく、表面調査によって遺跡の広がり、時代幅、種類などをつかもうとするものである。この調査の基本は踏査(歩行調査)で、調査対象地を主に、その周辺から、ときには平野全体に在地住民からの聞き取りもしながら行われる。ことに調査対象地内では耕作などによって地表面に浮き上がった遺物を丹念に採集し、遺跡の時期、分布範囲、分布の密度を把握する。その際に2500分の1か3000分の1の小縮尺の地図を準備し、遺物の採集地点を記入しておく。踏査者が多人数の場合、等間隔に一列になって進行すると、公平な目配りがきくので、採集量が客観性を帯び、それを基にした統計処理から、分布範囲や分布の濃淡もより的確に推測できる。踏査に際しては、このほか地形、地目、削平箇所、崩壊箇所、堆積(たいせき)土の厚さ、破壊された遺構の散乱状況を確認し地図中に記入しておく。青銅器などの金属器の探査には金属探査器が使われることもある。航空写真には、上部構造は削平されても、古墳や居館の輪郭が水田中に浮き出ていることもある。また不自然な走行のあぜが古墳の外縁線と一致していることもある。こうした踏査は雑草や下草が繁茂してない冬から初春にかけて行うのが望ましく、またこの期間であればマムシの害を避けることもできる。
 しかし踏査による表面観察だけでは遺跡の深さ、遺構の分布や種類はほとんど把握できない。そこでボーリングや試掘を併用して、最小限の破壊によって地下の状況の把握に努めることになる。1メートル内であればボーリングステッキ(折損によって事故の原因となることもあるので強固なものを使用)によって、包含層の厚さ、層数、石室、石棺、甕(かめ)棺、礎石などが確認でき、その結果を地図に記入しておく。それ以上の深さになるとハンドオーガーボーリングが有効であるが、遺構を損傷することもあるので注意を要する。さらに明確に知るためには、要所に最小・最低限の発掘溝を設けることもある。これは極小範囲とはいえ発掘を行うのであるから、埋蔵状況がより鮮明となって有力な証拠を得ることができるが、同時に遺構の損壊を伴うことも多いので、最小限にとどめたい。事前調査の過程で得られた成果はフィールドノート、地図、写真などに記録しておくべきである。また地質図、土壌図、各種地形図、地籍図なども準備し、遺跡の自然的、歴史的環境にも留意しておくべきである。[下條信行]

本調査

発掘範囲の設定は調査の目的によって異なってくるが、範囲の大小にかかわらず、遺跡地を格子状に方形の区画に割り付け、通し記号を与えておいたほうがよい。既述のように発掘は遺物と遺跡のおのおのの、そして相互の関係を調べる研究であるから、こうした区画を設定しておくと、どこで出土しようとその位置を示すことができ、互いの位置関係がひと目で了解できる。また整理のうえにも都合がよい。それのみならず、連続した土層観察や、やむをえず部分発掘が積み重なった場合も全体を統一するのに便利である。この区画はグリッドとかメッシュとよばれ、普通一辺4~10メートルの偶数値に設定され、その内部は細分されることもある。区画の基準線は、寺院、官衙(かんが)など歴史時代の遺構の調査には真北や磁北に求めるのが有効であるが、住居址、墳墓など方位より丘陵などの地形に制約されて営まれている遺跡では、尾根の稜線(りょうせん)に基準線を設定したほうが現実的である。また住居址など配列の方向性が予想できる場合は、それに基準線をあわせることも可能である。
 全面発掘によらず、トレンチ(条溝)発掘で調査を進める場合でも、グリッドを設け、区画線に沿ってトレンチ調査を行ったほうが相互の関連を把握するのに便利であることはいうまでもない。しかし遺跡の伸張方位や傾斜はかならずしも区画の方位性とは合致してはいないので、その場合、目的の方位にトレンチを設定してもよい。
 特殊の原因によって地層の逆転が生じない限り、下層が古く、上層が新しいという地質学の原理に倣って、発掘は上層より一枚ずつ土砂を取り払っていく作業なので、なによりも土層の識別力が要請される。土層堆積の原因は、火山灰の降下、河川の氾濫(はんらん)、流土、自然堆積、人為的造成など千差万別なので、土層の色調、土質、硬軟、土層中の含有物の相違などによって層の相違を見極め、層ごとに上層より下層に掘り下げてゆく。その場合、層の認定は複数で行うほうがよい。一層が一時期と限らないことがあり、一層が10センチメートル以上の厚さの層は何枚かに分けて分層発掘を行うべきである。こうした層の掘り下げを行うにあたっての共通の目安は、先の方形区画沿いに残される土層壁である。これは基準区画沿いに土層観察用に掘り残された土手で、上層から下層のすべての土層が残されており、現在掘り下げている土層とこの壁の土層をつねに照合しながら掘り下げることで、掘りすぎを防止することができる。この土層壁は遺跡の端から端まで連続し、またそれに直行して残っているので、どの地点で発掘しても、この土層壁を媒介することによって、どの層も遺跡全体のなかで統一的に層位の上下関係で把握することができる。
 発掘はこの土層壁に囲まれた区画を一単位として進行するが、隣接する他の区画と連係しながら進められなければならない。その際、互いの進行状況が同時的であるかどうかチェックするのは土層壁に残された層によってである。この壁は搬出土の運搬路、通路としても使われるので、そのためや自然崩壊に耐えうる幅(50センチメートル以上)に残しておく。
 発掘の過程で出土した遺物は損壊や盗難にも注意しながら、その層が掘り終わるまでそのままの状態に置いておかねばならない。そして遺物と層との共伴関係、遺物相互の上下関係を確認し、さらに遺物相互の平面的な出土関係を検討し、相互の有機的な意味を追究しなければならない。遺構に伴わなくてもその分布から石器製作所址を復原することもできるからである。ことに開地遺跡では、こうした方法が唯一の手掛りになる。こうした検討ののち、遺物は一つ一つ出土地点、出土高、出土番号が与えられ、それらの出土状態の実測(記録)がなされたあと初めて取り上げることが許されるのである。
 発掘面はつねに清掃してきれいな状態にし、平坦(へいたん)面にしておくことが必要である。こうしておけば層中に掘り込まれた遺構の輪郭が確認しやすくなる。この輪郭は、掘り込んだ基盤土とそこにのちに堆積した土との相違によって見分けることができる。遺構はただちに掘るのではなく、広範囲に観察し、柱穴などは倉庫、住居址としてのまとまりを確認して掘ったほうがよい。住居址など5~6棟切り合って出土することがあるので、切り合いから新旧の順を確定し、最後に切っている新しいものから順に発掘に着手するようにする。遺構中に埋没した土は、その遺構が廃絶されたあと、長期間かかって埋まった土であるから、その遺構の廃絶時を示す底面と埋土とは時期を異にするのが普通である。したがって、これを一挙に掘っては新旧の遺物が混合するので、この遺構の発掘はこれまでの層位掘りと同様に、遺構内に土層壁を残し(半分または4分の1に分けて掘ってもよい)、層位的に掘り下げて、遺構に伴うものとそうでないものとを弁別する。とくに床面に出土した遺物はこの遺構に伴う可能性が高いので、安易に取り上げてはならない。その処理の方法は前記と同じであるが、遺構との関連性に注意を要する。こうした方法を遺跡の最下層まで繰り返すことによって遺跡調査は終了する。
 発掘調査は遺物・遺構のみならず、土そのものをも資料として生み出す。花粉分析、プラントオパール、土壌学など厳密な層位的識別のもとに土壌の採取がなされ、専門家の手を借りる必要がある。また形質人類学(自然人類学)、建築学、動物学、地質学、地理学などの自然・人文の研究者の参加がなくしては、高度の多角的な資料を得ることはできない。また指揮系統、作業・管理分担を明確にし、組織的に行われねばならない。近年の調査は重機(クレーン、パワー・ショベル、ブルドーザー、ダンプカー)、ベルトコンベヤー、高層タワーなどを使用することが通常となり、それだけ危険も増したので、全員の安全管理に意を注がねばならない。[下條信行]

記録

動産的な遺物を除くと、不動産の遺構、遺物の出土状態、遺物と遺構との関係、土層など、発掘調査の成果のほとんどは記録としてしか残す方法がない。したがって刻々と進む調査と併行し、またそのくぎりには、かならず記録作成が伴う。記録には客観的表現が可能な平板測量、10分の1~20分の1に縮図した実測、質量感に優れた写真(航空撮影を含む)が使われる。実測には平面図と断面図の2種が必要である。調査前に地形測量、撮影を行い、開始後は資料が出土したら記録に残しておかねばならない。各記録には基準線、方形区画線を記入し、一図に総合して、個別図相互の位置関係が明らかになるようにしておかねばならない。垂直的には基準土層との層位関係が照合できることが必要である。また各遺物・遺構・諸資料には発掘区・層位を与え、図面との照合ができるようにし、層を基準として遺物・遺構の種類ごとに整理番号を与えておく。
 このあと、室内にて図面の整理、遺物の復原実測などを行い、研究考察を加え、報告書として刊行されることによって、初めて発掘調査は完了するのである。[下條信行]
『浜田耕作著『通論考古学』復刻版(1984・雄山閣出版) ▽文化財保護委員会編『埋蔵文化財発掘調査の手びき』(1966・国土地理協会) ▽岩崎卓也・菊池徹夫・茂木雅博著『考古学調査研究のハンドブックス1 野外編』(1984・雄山閣出版)』

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世界大百科事典内の発掘調査の言及

【発掘】より

…さらに同法では,いずれの行為も事前に文化庁長官に届け出ることが義務となっている。しかしその届出は,発掘届として一括処理されているため,調査のための発掘(以下これを発掘調査と呼ぶ)の正確な実施件数は確定されない現状にある。発掘届は,1983年度に1万4540件あったが,それは〈土木工事等のための発掘〉届と〈調査のための発掘〉届とを一括したもので,考古学の発掘調査の件数はおそらくその半ば以下であろう。…

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