アメリカの詩人・作家、ポー最初の短編推理小説。1841年4月発表。パリ、モルグ街のアパルトマン2階で母親と娘が惨殺されるが、犯人の手掛りをつかめないまま、迷宮入りになろうとする。そこへ素人(しろうと)探偵デュパンが登場し、多くの人が妙な声を聞いたこと、凶悪殺人事件にしては動機が欠けていること、2階の窓からしか侵入経路がないこと、娘の首を絞めた手の跡が異常に大きいことなどから、真犯人が人間でなくオランウータンである事実をつきとめる。これは密室トリックを利用し、素人探偵を登場させ、本格的推理の手順を踏んで事件を解決する世界最初の推理小説である。
[八木敏雄]
『八木敏雄訳『黄金虫・黒猫・アッシャー家の崩壊他五篇』(講談社文庫)』
…同じ英語圏であるアメリカでは,C.B.ブラウンの《ウィーランド》(1798),《エドガー・ハントリー》(1799)は本格的推理小説と呼べるし,J.F.クーパーのインディアン物語の中には,素人探偵冒険談の萌芽というべきものがある。 イギリスやアメリカのゴシック・ロマンス,とくに同国人のブラウンから大きな影響を受けたポーが1841年雑誌に発表した短編《モルグ街の殺人》は,彼自身が呼ぶ〈推理小説〉,すなわち本格派探偵小説の起源と呼ぶべき画期的作品である。続く《マリー・ロジェのなぞ》《盗まれた手紙》の全3作で,近代的推理小説のパターンがほとんどすべて実践されてしまった。…
…33年,《瓶の中から出た手記》が懸賞に当選し,作家としての,また雑誌編集者としての道が開けた。 その後ポーはリッチモンド,ニューヨーク,フィラデルフィアの各地で雑誌の編集にたずさわり,数多くの評論や書評を書くかたわら,唯一の長編小説《アーサー・ゴードン・ピムの物語》(1838)や短編集《グロテスクとアラベスクの物語》(1840)を出版し,《ライジーア》(1838),《アッシャー家の崩壊》(1839),《大渦にのまれて》(1841)などの幻想味豊かな名作,探偵デュパンが登場する《モルグ街の殺人》(1841),《マリー・ロジェのなぞ》(1842),《盗まれた手紙》(1844)などの一連の推理小説,《ハンス・ファールの無類の冒険》(1835),《メロンタ・タウタ》(1849)などの空想科学小説を70編近く発表した。ポーは人間の心にひそむ内的恐怖や無意識にみごとな形態を与えた怪奇小説や幻想小説の書き手,明敏でときには辛辣な批評家,それに今日隆盛をきわめる推理小説やSFの元祖であった。…
※「モルグ街の殺人」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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