改訂新版 世界大百科事典
「ヤッコカンザシゴカイ」の意味・わかりやすい解説
ヤッコカンザシゴカイ
Pomatoleios kraussii
多毛綱カンザシゴカイ科の環形動物。陸奥湾以南から南半球のメラネシア海域,南アフリカまで分布し,潮間帯の岩礁壁の日陰になるような場所に群生する。棲管(せいかん)は青色で,入口の上縁が前方に向かって三角形状に突出しており,また管の両側には細孔が1列に並んでいる。虫体は長さ15~35mm,体幅約2mmで,鰓冠(さいかん),胸部,腹部からなる。頭部前端の鰓冠には19~23対の鰓糸(さいし)があり,各鰓糸に3~5対の暗青色の眼点がある。鰓冠の基部から1本の太くやや扁平な殻柄が生じ,上端では1対の翼状側突起をだしている。殻蓋は扁平な盃状体で,表面は石灰質の薄い膜でおおわれている。体を管の中に引き入れたあと,この殻蓋で管の入口をふさぐ。胸部は6剛毛節からなり,襟(えり)剛毛はもたない。腹部は多くの体節からなり,櫛歯(くしば)状の剛毛列がある。成熟期は5~10月で,盛期は8月。この種類は漁網や養殖貝,また水中の諸施設に付着して害を与えることはない。
執筆者:今島 実
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
ヤッコカンザシゴカイ
やっこかんざしごかい / 奴簪沙蚕
[学] Pomatoleios kraussii
環形動物門多毛綱カンザシゴカイ科に属する海産動物。陸奥(むつ)湾以南に広く分布し、ごく普通にみられる。潮間帯で岩の日陰になるような場所に重なり合って群生する。棲管(せいかん)は青色で、口の上縁が前方に向かって三角形状に突出しており、管の表面の両側には細かい孔(あな)が1列に並んでいる。虫体は長さ15~35ミリメートル、体幅2ミリメートル。頭部の前端には、20対ほどの鰓糸(さいし)からなる鰓冠があり、おのおのの鰓糸には、3~5対の暗黒色の眼点がある。殻柄は扁平(へんぺい)で、上端は翼状突起になる。殻の蓋(ふた)は扁平な杯状体で、上面は石灰質の薄い膜で覆われている。胴部は6剛毛節からなり、襟剛毛(えりごうもう)はない。腹部は多くの体節からなる。成熟期は5~10月。カサネカンザシゴカイのように、海中諸施設に付着して害を与えるようなことはない。
[今島 実]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
ヤッコカンザシゴカイ
Pomatoleios krausii
環形動物門多毛綱定在目カンザシゴカイ科。体長 1.5~3.5cm。体は胸部と腹部に分れ,頭端には多くの鰓糸から成る鰓冠と1個の殻蓋がある。鰓冠には,繊毛流を起して餌を集めることと,鰓として呼吸をすることの働きがある。殻蓋は扁平な単一杯状体で,柄部の上端に1対の翼状突起をもつ。青色の棲管をつくってその中にすみ,潮間帯の岩の側面などに多数個体が群生している。棲管は石灰質で,口の上縁に三角形状の突起が前方に向って突出する。東北地方以南の暖海域に広く分布する。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報