改訂新版 世界大百科事典 「ヤネホソバ」の意味・わかりやすい解説
ヤネホソバ (屋根細翅)
Eilema fuscodorsalis
鱗翅目ヒトリガ科の昆虫。翅の開張2~3cm。春型は大きく,前翅は橙黄色または淡黄色の地に灰色鱗を散布し,前縁部だけが帯状に黄色のことが多いが,夏型は開張2cm内外と小さく,前翅は橙褐色のことが多い。東北地方南部以西に広く分布し,平野部に多い。成虫は春,初夏および初秋の3回発生し,よく灯火に飛来する。幼虫は地衣類を食べる毛虫で,体色が地衣とそっくりである。わらぶき屋根,屋根瓦,板塀などに生えたコケによく発生し,糸をたらして人家内に垂下してくるため,幼虫の刺毛によって皮膚に炎症が起こる。大発生したときには被害が大きい。かつてはとくにわらぶき屋根の家にすむ農家を悩ませたので,ヤネケムシ,ヤネムシ,イタヤムシ,ジコウボウなどという地方名がある。ホソバの仲間は50種以上が分布し,大部分の幼虫が地衣類を食べ,毒針毛をもっている。蛹化(ようか)するときは,体毛をまぜてつづった粗い繭をつくる。
執筆者:井上 寛
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報