日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユメザメ」の意味・わかりやすい解説
ユメザメ
ゆめざめ / 夢鮫
軟骨魚綱ツノザメ目オンデンザメ科の属の総称、またはその1種の名称。ユメザメ属Centroscymnusは臀(しり)びれがないこと、第1、第2背びれに棘(とげ)があること、上顎歯(じょうがくし)は直立した小さな棘状で、下顎歯は強く外側に傾いて連続する切縁を形成することが特徴である。ユメザメ属にはユメザメC. owstoniiとマルバラユメザメC. coelolepisの2種が知られている。
種としてのユメザメ(英名roughskin dogfish)は口より前の吻部(ふんぶ)が長いこと、第2背びれが第1背びれより大きいこと、体の腹側側方にキール(隆起線)があること、鱗(うろこ)が小さいことなどの特徴がある。日本では駿河湾(するがわん)などの深海から知られ、ほかにオーストラリア、ニュージーランドの海域、南東太平洋、大西洋、インド洋などから報告がある。生殖方法は卵黄依存型の胎生で、全長1.2メートルほどになる。深海延縄(はえなわ)や立縄(たてなわ)で漁獲され、肝臓から油をとり、肉は練り製品などの原料になる。国際自然保護連合(IUCN)のレッド・リストでは、絶滅危惧(きぐ)種中の「危急」(VU)に指定されている(2021年9月時点)。
[仲谷一宏 2021年10月20日]