日本大百科全書(ニッポニカ) 「ユーゲント様式」の意味・わかりやすい解説
ユーゲント様式
ゆーげんとようしき
Jugendstil
1890年から1914年までの時期にヨーロッパで国際的に広がった様式をさすドイツ語の名称。フランスのアール・ヌーボー、オーストリアのゼツェッション(分離派)とよばれているものなどの総称。諸芸術のジャンルの境界を捨て去り、素材の特性と機能に逆らわずに形式を求めていこうとする動きであった。平面性と線の強調がその特徴であったが、時がたつとともに平板な装飾に化す傾きを示した。ドイツでは、とくにミュンヘンで盛んであった。その南ドイツの都会でクレー、カンディンスキー、マルクらが初期作品をこの様式で描いた。それと並んで中部ドイツの都市ダルムシュタットにこの様式で一派をなす人々が集まった。オーストリアではクリムト、スイスではホードラーがユーゲント様式の絵画の代表者とされる。文学では叙情詩や短編小説のような小品となって現れ、デーメルやビーアバウムらの詩がこれに属する。ゲオルゲ、リルケ、ホフマンスタールなどの作品もユーゲント様式による文芸とみられることがある。
[宮下啓三]