日本大百科全書(ニッポニカ) 「ゲオルゲ」の意味・わかりやすい解説
ゲオルゲ
げおるげ
Stefan George
(1868―1933)
ドイツの詩人。ライン河畔のぶどう酒販売業者を父に、ビンゲン郊外に生まれる。1888年ダルムシュタットのギムナジウム卒業直後から全ヨーロッパを遊歴、生涯定住の地をもたなかった。1933年ナチス・ドイツを去りスイスに移住、ロカルノ近郊で死去。詩業の開始は少数グループによる高踏的機関誌『芸術草紙』の創設であった。自然主義文学に強力に抗議し、厳格な節度と紀律に基づく形式意志を貫いた叙情詩によって時代の空虚さに対抗し、美と神秘の王国の建設を目ざした。ここには、古代ギリシア再生を願望したヘルダーリンの精神的ゲルマニアの形姿、ニーチェの英雄的貴族的な生の感情、フランス象徴派詩人の芸術観とイギリス・ラファエル前派の美の信仰が故郷のローマ的ドイツ的伝統と一体となって息づいている。彼を中心とする結社をゲオルゲ・クライスという。主要作品に『魂の一年』(1897)、『生の絨氈(じゅうたん)』(1900)、『第七輪(だいしちりん)』(1907)、『新しい国』(1928)などの詩集と、ダンテ、ボードレール、シェークスピアらの翻訳がある。1976年にビンゲンのシュテファン・ゲオルゲ・ギムナジウムにゲオルゲ記念文庫が開設された。
[林 秀之]
『手塚富雄訳・編『ゲオルゲ詩集』(岩波文庫)』▽『『ゲオルゲとリルケの研究』(『手塚富雄著作集3・4』所収・1981・中央公論社)』