改訂新版 世界大百科事典 「ヨツメウオ」の意味・わかりやすい解説
ヨツメウオ
four-eyes
メダカ目ヨツメウオ科の魚で1属Anablepsの3種を含む。この仲間は両眼の瞳孔が水平の仕切りで上下に分かれ,眼が四つあるように見える。メキシコ南部,中央アメリカから南アメリカ北部にかけて分布し,淡水ならびに汽水域に生息する。原産地でもquatro ojos(四ツ目)と呼ぶ。近縁のメダカに似た体型をもち,全長30cmに達する。上方に突き出た眼の仕切りを水面に合わせて泳ぎ,空中のものは上の瞳孔,水中のものは下の瞳孔を通して,同時に見ることができる。そのためにレンズがいびつな形をとり,網膜も上下の2部分に分かれている。人が近づくと跳びはねて逃げ,とらえにくい。すべて胎生魚で,雄はしりびれの変形した交尾器を備える。奇妙なことに,交尾器の動きと雌の生殖口の向きは左右のいずれかに偏っており,交尾の際には,たとえば左利きの雄が右利きの雌をというように,利き手の逆な雌を相手にするという。左利きと右利きの比率は雌雄ともにほぼ1:1となっている。
執筆者:羽生 功
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報