日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヨーロッパ特許庁」の意味・わかりやすい解説
ヨーロッパ特許庁
よーろっぱとっきょちょう
European Patent Office
ヨーロッパ域内で有効な特許を一括して審査する機関。略称EPO。日本では欧州特許庁とよばれることもある。1973年署名のヨーロッパ特許条約European Patent Conventionに基づき、1977年に発足したヨーロッパ特許機構European Patent Organisationの下部組織である。本部をドイツのミュンヘンに置き、ドイツのベルリン、オーストリアのウィーン、オランダのライスワイク(ハーグ郊外)、ベルギーのブリュッセルに事務所をもつ。条約には2014年時点で、ヨーロッパ連合(EU)加盟国を中心に38か国が加盟しており、ヨーロッパ特許庁で一括審査を受けることにより、加盟各国への特許登録手続きが可能となる。ボスニア・ヘルツェゴビナとモンテネグロは条約の拡大加盟国で、ヨーロッパ特許庁を通じて両国の特許審査はできないものの、加盟国の特許権の効力が両国に及ぶことになっている。なお、ヨーロッパ特許庁は特許のみを所管し、意匠、商標はEUの下部組織であるヨーロッパ共同体商標意匠庁が所管している。
現在、ヨーロッパ特許庁の審査を通った後は、加盟各国の言語にそれぞれ翻訳した書類を作成し、特許登録手続きをしなければ権利が守られない仕組みとなっている。しかし2015年以降は、審査だけでなく登録手続きをもヨーロッパ特許庁が一括して受け入れる「統一特許(共通特許)」制度の導入が始まる。これにはEU加盟の25か国(イタリア、スペインは反対)が合意済みである。各国別に特許登録手続きをする手間とコストが省かれ特許出願が容易になるため、日本企業などによるヨーロッパ域内での生産や研究開発活動が活発になると期待されている。
[編集部]