日本大百科全書(ニッポニカ) 「ライアル」の意味・わかりやすい解説
ライアル
らいある
Gavin Lyall
(1932―2003)
イギリスの小説家。バーミンガム生まれ。1951年から2年間、国民兵役で英国空軍に勤務したのち、ケンブリッジ大学へ入学。卒業後、ピクチャー・ポスト、BBC放送、サンデー・タイムズなどに勤め、のち文筆生活に入る。61年『ちがった空』でデビューした。続く『もっとも危険なゲーム』(1963)は、一匹狼(おおかみ)のパイロットが、大富豪のアメリカ人に雇われ、死を賭(か)けたゲームに挑んでいく活劇サスペンス。高い評価を得たこの作品は、CWA(イギリス推理作家協会)シルバー・ダガー賞を受賞した。最高傑作ともいわれる第三作『深夜プラス1』(1965)は、ヨーロッパ屈指のガンマンである元イギリス情報部の主人公が、実業家をフランスからリヒテンシュタインまで指定時間内までに送り届けるという冒険サスペンス小説。息詰まるサスペンス演出、そして話運びの妙、なにより魅力ある主人公の語りにより、絶大な人気を集めた作品で、CWAイギリス作品賞を受賞した。1967年から68年にかけてCWA会長を務める。また、1980年代に入って、『影の護衛』(1980)に始まるSAS(イギリス陸軍特殊空挺(くうてい)部隊)の元隊員、ハリー・マクシム少佐を主人公にしたシリーズを発表した。さらに、マクシム少佐シリーズ『砂漠の標的』(1988)から5年ぶりに発表した『スパイの誇り』(1993)は、第一次世界大戦前夜のヨーロッパを舞台にした歴史スパイ小説である。主人公は、英国情報部員ランクリン大尉。以降、ランクリンを主人公にしたシリーズを発表し続けた。
[吉野 仁]
『石田善彦訳『スパイの誇り』(1999・早川書房)』▽『中村保男・遠藤宏昭訳『誇りへの決別』(2000・早川書房)』▽『松谷健二訳『ちがった空』(ハヤカワ・ミステリ文庫)』▽『菊池光訳『もっとも危険なゲーム』『深夜プラス1』『影の護衛』(ハヤカワ・ミステリ文庫)』▽『村上博基訳『砂漠の標的』(ハヤカワ・ミステリ文庫)』