日本大百科全書(ニッポニカ) 「ケンブリッジ大学」の意味・わかりやすい解説
ケンブリッジ大学
けんぶりっじだいがく
Cambridge University
イギリスの、伝統と由緒ある大学。起源は12世紀にさかのぼることができるといわれるが、一般には1209年オックスフォード大学から、多数の学徒が市民との騒擾(そうじょう)を避けて移動したことに求められる。1226年総長が任命され、ついでヘンリー3世は市長に通告を出し、国に名誉と利益をもたらす学生を歓迎するように命じた。最初の学寮(カレッジcollege)は1284年に設立された。1318年教皇ヨハネス22世が、全キリスト教国に通用する学位の認定をこの大学に承認したことにより、名実ともに一流の大学に発展した。ルネサンス期には新学問の一中心として栄えたが、これは人文主義者エラスムスの来講に負うところが大きい。ここはまた宗教改革運動の拠点でもあった。17世紀後半にはニュートンの指導のもとでとくに数学の研究が進み、大学の名声はひときわ高まった。制度改革は19世紀なかば以降着々と進み、非国教徒への開放、自然科学部門の拡充、講座増設、施設の拡張・整備などが行われた。
[松垣 裕]
現状
オックスフォード大学とともに「オックスブリッジOxbridge」と称されるように、組織や慣行において両校ともよく似通っている。カレッジの規模はケンブリッジのほうが少し大きい。2000年現在、トリニティ・カレッジやキングズ・カレッジなど31のカレッジがある(うち三つが女子カレッジであとはすべて男女共学)。カレッジ制度とチュートリアル・システムtutorial systemを基盤とした少人数手作り方式の大学教育を標榜(ひょうぼう)している。カレッジのフェローfellowとよばれる教師の大半がユニバーシティ(全学)の教師職を兼任し、ユニバーシティの教職員のほとんどがカレッジのフェローないしそのメンバーでもある。全学の教育・研究組織である学部facultyは21を数える。有名なキャベンディッシュ研究所も全学の施設である。ニュートン以来の伝統から科学研究に特色があるといわれ、過去に60人以上のノーベル賞受賞者を出しているが、専攻分野ごとの学生数は人文学と科学それぞれほぼ均衡している。
1997年現在、フルタイムの学生数1万5500人強。そのうち約4500人は大学院レベルの学生である。学生の約15%は130を超す国々からの留学生が占める。教職員数約7000人。
[安原義仁]