日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラクシュミー」の意味・わかりやすい解説
ラクシュミー
らくしゅみー
Lakmī
ヒンドゥー教の女神。シュリーŚrīともよばれる。ビシュヌ神の妻。吉祥天(きちじょうてん)と漢訳される。富と幸運の女神。太古、神々が不死の飲料アムリタ(甘露)を得るために、大海を攪拌(かくはん)した際に、海から出現したとされる。繁栄や幸運を意味するシュリーが女神として神格化されたのは、後期ベーダ文献の『ブラーフマナ』(祭儀書)においてである。シュリーはプラジャーパティ(造物主)より生じた。神々は光り輝く彼女を見て、彼女を殺してその富や美質を奪おうとしたが、プラジャーパティに制止されて思いとどまり、おのおのすばらしい贈り物を彼女から得た。シュリーは叙事詩においてラクシュミーと同一視され、ビシュヌの妻とみなされるようになった。
[上村勝彦]