プラジャーパティ(読み)ぷらじゃーぱてぃ(その他表記)Prajāpati

日本大百科全書(ニッポニカ) 「プラジャーパティ」の意味・わかりやすい解説

プラジャーパティ
ぷらじゃーぱてぃ
Prajāpati

古代インド造物主。「子孫(プラジャー)の主(パティ)」という意味。後期ベーダ文献、とくに『ブラーフマナ』(祭儀書)において、最高の創造神とみなされ、神々の父、万物の創造者、全世界の主宰者とされる。プラジャーパティによる創造神話は多種多様であり、その内容は相互に矛盾している場合が多いが、以下に若干の例をあげる。(1)プラジャーパティは創造せんとして苦行した。彼は地・空・天の三界を創造したのちにそれを熱した。すると、大地からアグニ(火神)が、空界からバーユ風神)が、天界からアーディティヤ(太陽)が生じた。(2)太初において宇宙は水であった。水が苦行すると黄金の卵が出現し、それからプラジャーパティが誕生した。彼は万物を創造した。

上村勝彦

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「プラジャーパティ」の意味・わかりやすい解説

プラジャーパティ
Prajāpati

インドのベーダの一部を構成する文献ブラーフマナに現れる世界創造神。その語義は「生類の主」であり,もとは子孫,家畜の増殖保護の神であったが,のちには創造神の地位にまで高められた。造物主の創造神話は多数説かれているが,それらには共通類型が認められる。すなわち,まず造物主が世界を創造しようとする欲望を起し,努力苦行して熱力 (タパス) を発する。以後種々の順序を経て一切の事物を創造したとされる。

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百科事典マイペディア 「プラジャーパティ」の意味・わかりやすい解説

プラジャーパティ

インドのベーダ神話,特にブラーフマナ文献に見える最高神。子孫・家畜の保護・繁殖をつかさどる神で,その名は〈生類の主〉〈造物主〉の意。

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世界大百科事典(旧版)内のプラジャーパティの言及

【インド神話】より

…《リグ・ベーダ》(10:129)にある〈無に非ず有に非ざるもの〉を説く賛歌において,宇宙創造説は深遠な哲学的思索の色彩を帯びる。 ベーダの一部門であるブラーフマナ(祭儀書)文献においては,造物主プラジャーパティPrajāpati(〈子孫の主〉の意)が最高の創造神となり,彼による種々の創造神話が説かれた。しかし,しだいに最高原理ブラフマン(梵)の重要性が認められるようになり,ブラフマンによる宇宙創造が説かれるようになった。…

【カメ(亀)】より

…【千葉 徳爾】
[インド,その他]
 亀はその特殊な形状,強い生命力などからして,世界各地で種々の象徴的意味を担った。インドの世界創造神話(《シャタパタ・ブラーフマナ》VII:5:1:2)では,創造者のプラジャーパティPrajāpatiによってつくられた亀の腹の甲が地に背の甲が天に,亀の体は大気になったという。丸く盛り上がった背の甲は天空を,平たい腹の甲は地を思わせるからである。…

※「プラジャーパティ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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