日本大百科全書(ニッポニカ) 「ブラーフマナ」の意味・わかりやすい解説
ブラーフマナ
ぶらーふまな
Brāhmaa
インド最古の聖典ベーダを構成する一部分の名称。「祭儀書」と訳される。文字どおりベーダの祭祀(さいし)の説明文献で、散文で記される。内容はアルタバーダ(釈義)とビディ(儀軌(ぎき))の二つに大別され、前者が祭祀に用いられる賛歌、祭詞、呪句(じゅく)などの意味の説明部分であるのに対し、後者は祭主や祭官の行う祭祀上の行為を述べたものである。そのおもなものは紀元前800年ごろを中心に成立したものと考えられる。
ブラーフマナの思想内容は、一元論の傾向が顕著であり、世界原因として水を考え、そこに黄金の卵が出現して世界が成立するとしたり、気息を世界原理と考えたり、宇宙原理としてのブラフマン(梵(ぼん))を想定したりする。ただし、この文献が祭祀の説明文献である性質により、これらのほとんどは祭祀と深くかかわる。また、ブラーフマナは多くの説話に富んでいるが、これも祭祀の説明であったりし、少なくも祭祀を前提にして察すべきものが多い。
[松濤誠達]