ラトル(読み)らとる(その他表記)Sir Simon Rattle

日本大百科全書(ニッポニカ) 「ラトル」の意味・わかりやすい解説

ラトル
らとる
Sir Simon Rattle
(1955― )

イギリスの指揮者。リバプールで生まれ、幼少期はピアノとパーカッションを学ぶ。1971年ロンドン王立音楽院に進学。19歳でジョン・プレイヤー国際指揮者コンクールで優勝。その後ボーンマス交響楽団ボーンマスシンフォニエッタの副指揮者に就任、3年間務めた後、ロイヤル・リバプール・フィルハーモニーBBCスコティッシュ交響楽団、ロッテルダム・フィルハーモニーなどに迎えられ、1980年にはバーミンガム市交響楽団(CBSO)の首席指揮者兼芸術顧問に就任。1990年には同市響の音楽監督となり、イギリスを代表するオーケストラにまで育て上げ、数々の海外公演成功に導く。1981~1983年ロンドンの「サウスバンク・センター夏の音楽祭」の芸術監督も務めた。

 1979年ロサンゼルス・フィルハーモニーを指揮してアメリカ・デビュー。1981~1994年同フィルの主席客演指揮者となる。この間、クリーブランド管弦楽団シカゴ交響楽団サンフランシスコ交響楽団トロント交響楽団ボストン交響楽団なども指揮する。1985年(昭和60)に初来日。また同年ロサンゼルスでオペラウォツェック』を指揮し、アメリカでのオペラ・デビューを飾った。

 1992年エイジ・オブ・エンライトンメント管弦楽団の首席客演指揮者となり、バーミンガム現代音楽グループの芸術監督も務める。1993年には指揮者としては異例の若さで、ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団の定期演奏会においてマーラー『交響曲第9番』でデビューし、絶賛される。日本には1985年以降も来日しており、1994年(平成6)来日の際は、マルタアルヘリッチと『プロコフィエフピアノ協奏曲第3番』、ギドン・クレーメルと『エルガー/バイオリン協奏曲』という豪華なメンバーによる日本初共演が話題をよんだ。1998年長年指揮を行ったバーミンガム市交響楽団を退任。2002年ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団の常任首席指揮者に就任。

 その他の活動としては、1998年ウィーン・フィルとのザルツブルク音楽祭でのバーミンガム市交響楽団とのベートーベン全交響曲チクルス(連続演奏会)、ウィーン・フィルとのベートーベン・チクルスへの取り組みがあり、2001年には東京でも同公演が行われた。2000年にはBBCプロムス(BBCが主催する夏のプロムナード・コンサート)でロッテルダム・フィルハーモニック・オーケストラとオペラ『パルジファル』全曲演奏会を行う。

 ラトルは、EMIの専属アーティストとして、長年にわたりバーミンガム市交響楽団との共演録音をはじめ多くの録音を行い、リリースされたCDは数々の国際的な賞を受賞している。1995年シェーンベルクの室内交響曲第1番、管弦楽のための変奏曲『期待』は、管弦楽曲部門でグラモフォン賞受賞。1998年ピアノ奏者レイフ・オベ・アンスネスLeif Ove Andsnes(1970― )と共演したブラームス『ピアノ協奏曲第1番』の録音が『ル・モンド・ドゥ・ラ・ミュジク』Le Monde de la Musique誌による「ショック1998年」を受賞。1999年アルフレート・ブレンデルとの共演によるベートーベン『ピアノ協奏曲』全曲の録音はフランスの音楽専門誌『ディアパゾン』Diapason誌の年間最優秀レコーディング賞を受賞。2000年にはグラモフォン賞で、オペラ部門ではシマノフスキーの『ロゲル王』、およびベルリン・フィルとの共演のCD『マーラー交響曲第10番』はレコード・オブ・ザ・イヤーとベスト・オーケストラ賞を獲得し、グラミー賞ベスト・オーケストラ・パフォーマンス賞を受賞している。

 また、イギリスよりラトルの音楽界への貢献に対して、1987年名誉大英勲章(CBE)受章。1993年バーミンガム市交響楽団との活動によりモンブラン文化賞受賞。1994年には「ナイト・バチュラー」の称号(サーの称号を冠する一代貴族)が与えられた。バーミンガム、リーズ、リバプール、オックスフォードの各大学とバーミンガム音楽院からは名誉博士号が贈られている。1995年フランス文化大臣より芸術文化勲章を受章。1997年『BBCミュージック・マガジン』BBC Music Magazine誌より優秀功労賞受賞。1999年にはバーミンガム市交響楽団とともに、その長年にわたる優れた音楽活動に対し、サウス・バンク・ショー賞(同名のイギリスのテレビ番組が主催)が与えられた。

[小沼純一]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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