改訂新版 世界大百科事典 「ラドクリフ報告」の意味・わかりやすい解説
ラドクリフ報告 (ラドクリフほうこく)
Radcliffe Report
1957年にイギリス大蔵省覚書に基づいて,法律家ラドクリフC.J.Radcliffeを委員長として設置された委員会の発表した報告書。この委員会の正式名称は〈金融制度の機能に関する委員会Committee on the Working of the Monetary System〉(通称ラドクリフ委員会)で,その役割は第2次大戦後のイギリス金融制度を再検討することであった。59年に有名な報告書《金融制度の機能に関する委員会報告》を発表した。これがいわゆるラドクリフ報告で,一国の金融経済を規定する要因として,伝統的に経済学において重視されてきた貨幣ではなく,もっと広義の流動性を強調した。つまり一国の総需要を適切に管理するためには,金融機関や一般の支出主体が保有する流動的資産の額,すなわち流動性ポジションを制御することが必要だと主張したのである。この主張は,貨幣供給量の制御を第一義的とみなす貨幣数量説の考え方を批判するものとして注目された。
執筆者:堀内 昭義
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報