コトバンクはYahoo!辞書と技術提携しています。

貨幣数量説 かへいすうりょうせつquantity theory of money

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

貨幣数量説
かへいすうりょうせつ
quantity theory of money

物価水準は貨幣数量に比例して変化するという理論。多様な形態で論じられており,代表的なものに I.フィッシャーの交換方程式ケンブリッジ学派の現金残高方程式がある。前者は取引高は価格Pと取引数量Tの積で表わされ,またそれは貨幣数量Mとその流通速度Vの積に等しいとする式である。すなわち PT=MV 。ここでVはほぼ一定とみなし,取引高は貨幣数量と関係なく決ると仮定するので,貨幣数量の増加は価格の比例的上昇をもたらすとするものである。これに対し後者は貨幣所得の増加が貨幣の限界効用を低下させ,物価水準一般の上昇をもたらすというもので,次式で表わされる。 MkpY ( Y は実質所得) 。Kをその最初の唱導者 A.マーシャルの名前により「マーシャルのK」と呼ぶ。近年になり再びシカゴ大学の M.フリードマンなどによって新しい貨幣数量説が主張されている。これは経済変動の主たる要因が通貨量の変動にあるとする理論で,従来の技術的な関係とは異なるが,貨幣量が独立的に動き,経済の動きを決定するという意味で,新貨幣数量説と呼ばれる。 (→シカゴ学派 )  

出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報

デジタル大辞泉の解説

かへいすうりょう‐せつ〔クワヘイスウリヤウ‐〕【貨幣数量説】

物価水準上下は、他の事情が等しいかぎり、貨幣数量の増減に比例するという学説。米国の経済学者フィッシャーに代表される。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

百科事典マイペディアの解説

貨幣数量説【かへいすうりょうせつ】

経済の他の事情に変化がなければ,流通している貨幣数量の増減は,正比例的に物価水準を騰落させると説く理論。すなわち,貨幣の量が2倍になれば,物価もほぼ2倍になると説く。
→関連項目貨幣の流通速度フィッシャーの交換方程式

出典 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト百科事典マイペディアについて 情報

世界大百科事典 第2版の解説

かへいすうりょうせつ【貨幣数量説 quantity theory of money】

貨幣量と物価の関係についての古典派の学説で,〈ある国の物価水準は,その国に流通している貨幣の量に比例して決まる〉というものである。すなわち,貨幣の量が2倍になれば物価もほぼ2倍になると考える。 この学説のはしりはすでにD.ヒュームらにみられるが,19世紀のイギリスにおいて学説としてより明確なものとなり,さらにA.マーシャル,A.C.ピグーらのケンブリッジ学派によって発展させられた。上記の貨幣と物価の関係に立ち入ってふれれば,一定の貨幣量はいくつもの取引の媒介を行うことから,貨幣に媒介される取引の総価値額は,その社会に存在する貨幣の総額に,貨幣が取引を媒介する頻度,すなわち流通速度を掛けたものに等しい。

出典 株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について 情報

大辞林 第三版の解説

かへいすうりょうせつ【貨幣数量説】

貨幣の価値は流通する貨幣の総量によって決まるとする説。ここから物価水準の変動の原因を貨幣量の変化に求める。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

貨幣数量説
かへいすうりょうせつ
quantity theory of money

貨幣量と物価水準との間に一方的な因果関係を認め、貨幣量の変動が物価水準の変化をもたらすという見解。この考え方の起源は18世紀のD・ヒュームにまでさかのぼれるが、その精緻(せいち)な理論的定式化を行ったのはI・フィッシャーである。いま貨幣量をM、貨幣の流通速度をV、物価水準をP、取引量をTとすると、一定期間中の総取引量は支払われる貨幣数量に等しいゆえ、MVPTという関係式(フィッシャーの交換方程式)が得られる。この式自体は会計的恒等式であり、なんら因果関係は示していないが、短期間をとってみると、(1)Tは実物的要因により決まっており、(2)Vは制度的要因により与えられていると想定できるので、彼はこの式を因果的に解釈し直し、Mの増大はつねにPの比例的上昇を引き起こすと結論した。フィッシャーの考え方はその後、マーシャル、ピグーらのケンブリッジ学派により発展させられた。彼らの見解はMkPyという現金残高方程式に要約されるため、現金残高数量説とよばれている。ここでMPは前と同様、yは実質国民所得、kは人々が貨幣の形で保有したいと思っている所得の割合とすると、前記の式は貨幣の需給均衡式を示している。彼らは、この式におけるkを可変的であると仮定することにより、貨幣量変化と物価水準変化の関係はかならずしも比例的ではなく、人々の貨幣保有行動により左右されると考えた。
 これら二つの古い貨幣数量説はケインズ経済学の登場により、その理論的関心が急速に失われるに至ったが、それを新たに解釈し直したのがM・フリードマンによる新貨幣数量説である。彼は貨幣数量説を貨幣需要の理論として把握し、貨幣の流通速度は貨幣所得、物価水準、各種の資産の収益率などの安定的関数として表されるとした。そして、アメリカの実際のデータを利用し、貨幣量の変化は短期的には産出量に、長期的には物価水準に影響を与えるが、その大きさや期間の正確な長さは時と場合により異なることを明らかにした。この結果をもとにフリードマンは、経済安定達成の方法として、貨幣供給量を経済成長率に見合った一定率で増大すべきであるというルールに基づく貨幣政策の実施を提唱している。このような新貨幣数量説の考え方は、各国の中央銀行が最近になって採用するようになったマネーサプライ重視の金融政策に少なからぬ影響を与えている。[外山茂樹]
『高橋泰蔵・小泉明著『交換方程式と現金残高方程式』(1958・勁草書房) ▽M・フリードマン著、三宅武雄訳『貨幣の安定をめざして』(1963・ダイヤモンド社) ▽M. Friedman “The Quantity Theory of Money, A Restatement” in M. Friedman (ed.), Studies in the Quantity Theory of Money (1956, U.of Chicago P.)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の貨幣数量説の言及

【価原】より

…題名は価(賃金,物価)とは何か,価の本質,の意。河上肇が1905年《国家学会雑誌》で,ついでまた福田徳三が,それが貨幣数量説(〈金銀多ければ物価貴し金銀少ければ物価賤し〉),グレシャムの法則(〈悪幣盛んに世に行はるれば精金皆隠る〉)を主張していることを指摘して以来,江戸時代の経済論,貨幣論の傑出したものとして有名になったが,論は広く政治政策論にも及んでいる。梅園が,明治時代一般に知られるようになったのは,この1編によってである。…

【マネタリズム】より

…この学派の人々をマネタリストmonetaristと呼ぶ。思想的にはシカゴ学派の一分派であり,その理論的基礎は新貨幣数量説という貨幣理論であるが,実際には貨幣数量説より広い意味をもつ。新貨幣数量説は,J.M.ケインズがケインズ革命において批判した古典派の貨幣理論であった貨幣数量説を,とくにインフレの分析に有用な形で復活させ,かつ現代的なものにしたものである。…

※「貨幣数量説」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

貨幣数量説の関連キーワードスチュアート(Sir James Denham Steuart)フリードマン(Milton Friedman)フィッシャー(Irving Fisher)インフレーション理論M. フリードマンI. フィッシャーインフレーション国民経済学講義現金残高数量説マネタリストケインズ学派マネタリズム取引量指数フラートントゥック通貨主義価原

今日のキーワード

偽計業務妨害罪

虚偽の風説を流布し,または偽計を用いて人の業務を妨害する罪 (刑法 233) 。流布とは,犯人自身が公然と文書,口頭で伝達するほか,口伝えに噂として流す行為も含む。偽計とは人を欺罔,誘惑し,あるいは人...

続きを読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android

貨幣数量説の関連情報