改訂新版 世界大百科事典 「ラモンイカハル」の意味・わかりやすい解説
ラモン・イ・カハル
Santiago Ramón y Cajal
生没年:1852-1934
スペインの神経解剖組織学者。サラゴサ大学で医学を学び,同大学で解剖学・組織学の研究を始め,1877年には教授となった。その後,バレンシア大学,バルセロナ大学,マドリード大学の教授を歴任し,組織学のいわゆるスペイン学派をつくりあげた。彼は,イタリアのC.ゴルジが開発した脳組織の染色法,いわゆるゴルジ法に感動し,それを用いて鳥と哺乳類の小脳の研究を進めているうちに,神経細胞間の連絡の相互作用は,ゴルジらによっていわれていたような吻合(ふんごう)ではなく,接触であり,神経は,互いに接触している独立した細胞(ニューロン=神経単位)によって成立しているという説を提唱した。この両者の間で組織学的のみならず発生学的・生理学的観点から論争が繰り広げられたが,1906年にラモン・イ・カハルはゴルジとともにノーベル医学・生理学賞を受賞することになる。このニューロン学説はシナプス概念などを生み,神経生理学の重要な基盤を提出した。
執筆者:鬼頭 秀一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報