日本大百科全書(ニッポニカ)「吻合」の解説
吻合
ふんごう
anastomosis
血管や神経などが相互に連絡をもつ状態をいう。たとえば、高等動物の血管は相互に網の目状に連絡しており、その一部に血流障害があっても、他から側副血行路を介して血流が保たれるようになっている。また、動脈から静脈へは毛細血管を経て移行するが、鼻粘膜や一部の皮膚では動脈から静脈へ直接移行する誘導循環がみられ、動静脈吻合とよばれ、体温調節などに役だっている。一方、生理的には分離しているべき内腔(ないくう)や臓器が病的に連絡をもつ場合もある。たとえば、動静脈奇形(動静脈瘻(ろう))、ボタロー管開存症、食道気管瘻などがある。
外科的治療の目的で吻合を行う場合も少なくない。消化管では胃空腸吻合術はごく一般的に行われているほか、近年は血管の吻合技術が著しく進歩し、脳神経外科領域などでは顕微鏡下で1ミリ以下の神経や血管の吻合術も行われるようになっている。
[加川瑞夫・山本昌昭]