改訂新版 世界大百科事典 「ラーラ」の意味・わかりやすい解説
ラーラ
Mariano José de Larra
生没年:1809-37
スペインの批評家。マドリードに生まれたが,独立戦争で父がナポレオン側に加わったため,戦後,フランスに亡命。同地で初等教育を受けた。1817年に恩赦で帰国。20歳のときに結婚するが,完全な失敗に終わり,ジャーナリストとしての道に専念。フィガロの筆名で政治,社会,風俗,演劇に対してしんらつな批評を展開。非常な好評を博し,代議士も務めた。35年に再びパリを訪れ,洗練されたフランス文化に接した彼は,批判的・諧謔(かいぎやく)的・風刺的精神でもって,祖国の風俗を正し,文化水準をヨーロッパ先進諸国のそれにまで高めようと努力した。しかし,その根底には募りくる厭世的感情と祖国に対する絶望的な懸念と不安が脈打っている。スペインの病根に鋭いメスを入れた彼の批評精神は,18世紀の啓蒙家たちと〈98年世代〉作家たちをつなぐ軸の役割を果たしている。戯曲《マシアス》(1834)および小説《病王ドン・エンリケの近侍》(1834)はともに,人妻との恋愛事件で自殺したラーラと同様,道ならぬ恋の犠牲者となった中世の吟遊詩人をモデルにしたもの。
執筆者:志賀 一郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報