恩赦(読み)おんしゃ(英語表記)pardon

翻訳|pardon

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

恩赦
おんしゃ
pardon

行政権の作用により,公訴権を消滅させ,または裁判所による刑の言い渡しの効果の全部または一部を消滅させること。刑事政策的見地からなされるものと,政治的観点からなされるものとがある。日本では,内閣が決定し (憲法 73条7号) ,天皇認証する (7条6号) 。恩赦法の定めによれば,には大赦特赦減刑刑の執行の免除復権の5種類がある。恩赦は,これを行う方法で分けると,政令により罪の種類などを定めて一律に行われる政令恩赦と,中央更生保護審査会の申し出に基づいて行われる特定個人に関する個別恩赦とがある (前者の例として,たとえば,皇太子成婚恩赦,沖縄復帰恩赦など) 。

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デジタル大辞泉の解説

おん‐しゃ【恩赦】

行政権によって公訴権を消滅させ、あるいは刑の言い渡しの効果の全部または一部を消滅させること。大赦特赦、減刑、刑の執行免除、および復権の5種がある。
律令制で、天皇の大権によって刑罰を軽減すること。皇室・国家の慶事、凶災の際などに行われた。江戸時代には幕府諸大名も行った。

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百科事典マイペディアの解説

恩赦【おんしゃ】

元首その他国の最高権威者が国家刑罰権の全部または一部を消滅させること。その目的は画一的な法の適用に伴う欠点を除き,犯人に対し公正妥当な措置を行うこと,事情の変更により処罰する必要がなくなった場合にそれを避け,あるいは国家の慶弔に際し喜びを分かち,または冥福(めいふく)を祈ることとされるが,その乱用は許されない。日本国憲法では内閣がこれを決定し,天皇が認証する(憲法73条7号)。大赦特赦減刑,刑の執行免除,復権があり,細部は恩赦法(1947年)に規定。
→関連項目死刑日親犯罪者予防更生法

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世界大百科事典 第2版の解説

おんしゃ【恩赦】

国家が自ら刑罰権やその効果を否定し消滅せしめる行為。英語でpardonという。主権者の〈慈悲〉を源泉として国家的慶弔を事由に行われ,長く合理的規整の外に置かれていた。国家元首による恩赦が乱用されたため,カントらの啓蒙思想家に制度そのものが批判され,フランス革命期には憲法制定議会によって廃止されたこともあった。しかし,刑事司法の画一的形式性の緩和,誤判救済などの見地において有意義なので,現在でも各国でひろく認められている。

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大辞林 第三版の解説

おんしゃ【恩赦】

確定した刑の全部または一部を消滅させること。内閣が決定し、天皇の認証により行う。大赦・特赦・減刑と刑の執行の免除および復権の五種がある。奈良・平安時代には、天皇の権限で慶事や凶事に際して行われた。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

恩赦
おんしゃ

司法手続によることなく、国家の具体的な刑罰権の全部または一部を消滅させること。大日本帝国憲法のもとで恩赦は天皇大権に属していたが、現行憲法は、内閣が決定し、天皇が認証することにした(憲法73条7号、7条6号)。恩赦の種類・内容については、1947年の恩赦法(昭和22年法律第20号)に定められている。同法によれば、恩赦には、大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除、および復権の5種がある。[名和鐵郎]

大赦

政令により特定された犯罪につき刑罰権を一般的に消滅させることであり、対象が特定人に限られることはない。このなかにも、(1)有罪の言渡しを受けた者につきその言渡しの効力を消滅させる場合と、(2)有罪の言渡しを受けない者につき公訴権を消滅させる場合とがある(恩赦法3条)。[名和鐵郎]

特赦

有罪の言渡しを受けた特定の者に対して、有罪の言渡しの効力を失わせるものである。大赦、特赦のいずれの場合にも、有罪言渡しの効力が失われれば、受刑者は釈放され、執行猶予中の者は猶予期間満了と同じ効果を得ることとなる。[名和鐵郎]

減刑

刑の言渡しを受けた者に対し、政令により罪または刑の種類を定めて一般的に刑を減軽すること(一般減刑)、および刑の言渡しを受けた特定の者に対し刑を減軽するか、刑の執行を減軽すること(特別減刑)をいう。ただ、刑の執行猶予期間中の者については、刑を減軽するにすぎない場合と、この減軽に加えて執行猶予期間をも短縮することもできる。[名和鐵郎]

刑の執行の免除

刑の言渡しを受けた特定の者に対しこれを行う。ただし、刑の執行猶予期間中の者に対してはこれを行うことはできない。刑を言い渡さない刑の免除とは異なる。なお、恩赦の一種として行われるほかに、刑法上刑の時効が完成したときその執行が免除される(刑法31条)。[名和鐵郎]

復権

一般復権と特別復権がある。一般復権とは、有罪の言渡しを受け法令により一定の資格を喪失したり、これを停止された者に対し、政令で要件を定めて一般的に資格を回復することをいう。特別復権とは、特定の者に対して個別的に復権を認める場合である。なお、恩赦の一種としての復権のほかに、現行刑法にも法律上の復権がある。
 恩赦は、法の画一的な適用に伴う弊害の除去、誤判の救済、刑事政策的な必要性などに関し一定の機能を果たしうるが、行政府により司法判断を修正するものであるから、政治的に濫用される危険性があることに留意しなければならない。[名和鐵郎]

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精選版 日本国語大辞典の解説

おん‐しゃ【恩赦】

〘名〙
① 律令制で、慶事凶事にあたって天皇が恩恵をもって罪をゆるし、刑を免ずること。罪の軽重、種類、地域などによって、大赦、非常赦、常赦、臨時赦、曲赦などがあった。赦。赦宥(しゃゆう)。免物。免者。〔新儀式(963頃)〕 〔韓愈‐赴江陵途中詩〕
② 裁判によって確定した刑罰を行政権の作用によってゆるし、その内容、効果を変更または消滅させることで、大赦、特赦、減刑、刑の執行の免除および復権の五種の総称。内閣が決定し、天皇の認証を得て行なう。この認証は天皇の国事行為の一つ(憲法一七条)。
※いやな感じ(1960‐63)〈高見順〉二「恩赦があるから、〈略〉十年つとめて出てくれば、いい顔だ」

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世界大百科事典内の恩赦の言及

【赦】より

…日本古代の赦は,すでに大化前代に見られるが,その事例の多く存するのは,律令法が受容された奈良朝以降である。日本の律令に現れた恩赦には,赦,降,勅放の3種がある。赦は恩赦,大赦ともいい,特定個人を対象とせず,広く天下一般に布告するもので,犯罪者の罪を全免する。…

※「恩赦」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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