リライアンス財閥(読み)りらいあんすざいばつ

日本大百科全書(ニッポニカ) 「リライアンス財閥」の意味・わかりやすい解説

リライアンス財閥
りらいあんすざいばつ

ディルバイ・アンバニDhirubhai Ambani(1932―2002)が一代で築いたインド財閥。「人間機関車」とよばれたアンバニはグジャラート州の小学校教師の家に生まれたが、16歳でアラビア半島のイエメンに行き、ガソリンスタンドや貿易会社で働いた。10年後にインドに戻ると、海外経験を生かしてムンバイで貿易会社を設立し、レーヨンナイロンポリエステルなどを取り扱って蓄財した。1966年にはリライアンス・テキスタイル・インダストリーズを設立し、合成繊維の製造に着手。サリーなどの高級衣料品が上流階層の間で売上げを伸ばし、繊維業界での地位を確立した。1982年、社名をリライアンス・インダストリーズと改称し、1984年にアメリカのユニオン・カーバイド社のインド工場を買収し、エンロン社との合弁石油精製所や発電所を建設した。繊維製品などの加工品をつくりだす企業から、石油化学、石油精製、資源探索など原材料そのものを取り扱う企業へと後方統合を推し進め、多角的事業展開を矢つぎばやに行った。1991年のインドの経済自由化以降は、電力、エネルギー、テレコム、ITなどの成長分野へ参入した。このようにして短期間に、老舗(しにせ)のタタ財閥をもしのぐまでに急成長した。これらの事業が成功するうえで、長男でアメリカ・スタンフォード大学MBA(経営学修士)のムケシュMukesh Ambani(1957― )と、アメリカ・ペンシルベニア大学MBAの二男アニールAnil Ambani(1959― )が果たした役割は大きかった。しかし2002年に父が死去すると、二人の兄弟は事業を分割し、長男がリライアンス・インダストリーズを継承し、石油化学、石油精製に加えて小売(スーパー)などのグループ事業をも統括し、二男は電力のリライアンス・エナジーインフラ整備のリライアンス・インフラストラクチャー、携帯電話のリライアンス・コミュニケーションズ、ノンバンク業務のリライアンス・キャピタルなどを経営することとなった。その後、兄のほうはクリシュナ川・ゴダバリ川沖で油田天然ガスの開発にも成功し、また、弟の事業も携帯電話やインフラなどを中心に拡大著しく、2008年には両者とも世界の大富豪のトップ10に入るほどの急成長を遂げた。

[三上敦史]

『三上敦史著「インドの新興財閥の生成と発展――アンバニー財閥とルイア財閥のケースを中心として」(『同志社商学』第50巻第5・6号、1993)』『財団法人アジアクラブ編『インドの財閥と有力企業グループ』(1997・国際交流財団)』『絵所秀紀著『離陸したインド経済』(2008・ミネルヴァ書房)』『日本経済新聞社編『インド――目覚めた経済大国』(日経ビジネス人文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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