国籍の異なった複数の企業が事業を行うために共同で出資すること。このようにして設立された会社が合弁会社joint ventureである。企業が外国に進出して事業を行う場合,単独でこれを行うことが少なくない。たとえば支店を設置したり,自社が資本金を全額出資して現地法人を設立することができる。しかし,こうした方式によらず,進出先の国の企業と共同出資を行い新企業を設立することが合弁である。
合弁会社を設立する理由は多様である。第1は,進出先の国の経済的な慣行や制度に円滑になじむことが困難な場合で,現地企業の協力を得るために合弁会社を設立することになる。したがって,進出先の国の実情になじむにしたがって,合弁を解消することもある。第2は,進出先の産業を育成することを目的とする場合で,先進工業国の企業と発展途上国の企業が,発展途上国において合弁会社を設立することになる。この場合には,たんなる資金援助にとどまらず,経営ノウ・ハウや技術の移転を伴うことが普通である。また,発展途上国によっては,外国企業の直接進出を認めず,合弁のみを認めることもある。こうした形態の合弁の場合,発展途上国側が利益を受けるだけでなく,先進工業国の企業の側でも市場の確保や生産コストの低減などの利益がある。第3は,技術提携など,相互の経営資源を交流させるために共同で企業を設立する場合である。特許権の取得やロイヤリティの支払などによる技術導入にとどまらず,共同で技術開発など新しい事業に取り組むために合弁という形態をとるのである。なお,現実には,以上の三つの場合が多かれ少なかれ相互にからんでいることが少なくない。また,合弁のイニシアティブを進出した企業がとるか進出先の国の企業がとるかによって,役員の構成や出資比率が異なる。
合弁という経済現象は,古くて新しい。合弁は,ある意味では帝国主義の歴史とともに古い。しかし,第2次大戦後植民地の独立があいつぎ,南北問題がクローズ・アップされたり,先進国の間でも経済の国際化が進展するに及んで,経済協力や技術移転などに寄与する合弁会社の設立が各国で増加している。日本国内でも合弁会社は増加しており,また日本企業が外国で合弁会社を設立する例が1970年代以降急増している。
執筆者:清成 忠男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
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