日本大百科全書(ニッポニカ) 「レールケ」の意味・わかりやすい解説
レールケ
れーるけ
Oskar Loerke
(1884―1941)
ドイツの詩人。西プロイセンの小村ユンゲンに生まれる。ベルリン大学に学び、1903年以後その地に定住。表現主義と決別し、清新な自然叙情詩への道を開く。詩人として真価を認められたのは、自然と音楽が一つとなって脈動している『詩集』(1916。のち1929年『牧神の音楽』と改題)によってである。以後、「禍(わざわ)いの歳月」にひどく悩まされながら、微細な自然観察を介して自然の裏側を透視するレールケの詩境は、そのまま自然的宇宙の律動であり、ことばである。彼の課題は、自然的宇宙の息吹を感受することにより、無常なものを不滅なものの比喩(ひゆ)に化そうとしたところにある。したがって、死者の不在性も現在性を獲得する。『秘めやかな都市』(1921)、『大地の息吹』(1930)など明澄な詩作を経て、『銀あざみの森』(1934)や『世界の森』(1936)になると、自然観照を下地としながらも希望のうちに絶望が奥深く潜み、時代への呪詛(じゅそ)が目だつ。詩のほか、小説、音楽評論、詩人論など文芸活動は多彩。
[巌 和峯]
『高橋重臣訳『別れの手(抄)』(『世界名詩集大成8』所収・1959・平凡社)』▽『神品芳夫訳『ブルックナー』(1968・音楽之友社)』