日本大百科全書(ニッポニカ) 「ナチズム」の意味・わかりやすい解説
ナチズム
なちずむ
Nazism 英語
Nazismus ドイツ語
1920年代から第二次世界大戦の終結まで、ドイツの民族運動を指導し、33年以後は政権を担当した「国民社会主義ドイツ労働者党」(略称ナチス、ナチ党)の思想原理。この時期にイタリアや日本でも登場したファシズム、全体主義の一種。したがって、ナチズムは、ファシズムに共通の性格をもち、反個人主義、反自由主義、反民主主義、反議会主義、反社会主義、反マルクス主義などを標榜(ひょうぼう)するとともに、国家すなわちファシズム政権が政治・経済のあらゆる面にわたってコントロールすること、また国益が私益に絶対的に優位することを主張する。しかし、ナチズムの特色は、とくにその民族の概念にみられる。ナチ党の「血と大地」「血の純潔」「ゲルマン民族の優秀性」という民族概念は、国内的にはユダヤ人排撃の思想となり、対外的には他民族を侵略してその支配下に置かんとする軍国主義を正当化する思想となった。
[田中 浩]
『田中浩著『カール・シュミット』(1992・未来社)』