改訂新版 世界大百科事典 「ロアゾー」の意味・わかりやすい解説
ロアゾー
Charles Loyseau
生没年:1564-1627
フランスの思想家,法理論家。祖父の代までは農民であったが,父がパリ高等法院付きの弁護士となり,以後代々法曹界で活躍した。ロアゾーもパリで学業を終えたのち,サンス上座裁判所の代官を経て,1600年からはロングビル公夫人の所領であったデュノア伯領の奉行職を永く務め,最後にはパリ高等法院付きの弁護士となっている。なお,息子はパリ租税法院評定官,孫はパリ高等法院評定官を務めた。
ロアゾーは法実務に携わると同時に,理論家として優れた業績を残した。主著は《公権論Traicté des seigneuries》(1608),《官職論五章Cinq livres du droict des offices》(1610),《身分制論Traicté des ordres et simples dìgnitez》(1610)の3著であるが,17世紀を通じて版を重ね全集版も編まれるなど,大きな影響を及ぼした。《身分制論》においては,当時の社会を,多様な身分団体(〈社団〉)からなるものとみなし,それらの身分団体が,一定の価値尺度に従って階層化されるところに社会の秩序が保障されると主張しており,アンシャン・レジーム社会の身分制的構造を浮彫にした名著である。また《官職論五章》においては,絶体王制期の〈官職〉が,公職であると同時に一つの名誉ある地位として売買の対象ともなり家産の一部をなすものであることを明らかにし,家産官僚制の特質を鋭くついている。ロアゾーの社会理論は,16~17世紀のフランス社会の現実に深く根ざしており影響も大きかったが,18世紀に入ると,啓蒙思想の社会観によってしだいにとって代わられるようになった。
執筆者:二宮 宏之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報